国立環境研究所と海洋生物の保全に取り組むNPO法人「OWS」(東京)は共同で10~11日、壱岐海域のサンゴ礁を調査した。
調査には同研究所の山野博哉生物多様性領域長(51)ら5人が来島。郷ノ浦町の黒崎半島周辺と半城湾の神瀬(こうぜ)に設けていた調査区内のサンゴの成長具合や周辺の魚の種類を調べた。調査の結果、特に病気や損傷により死んだサンゴはなかった。
サンゴは刺胞動物に分類され、個体が分裂することで群体を作りながら成長する。サンゴ礁は、サンゴが石灰質の骨格を積み重ねて作る地形を指す。サンゴ礁の面積は地球表面の0・1%ほどだが、9万種の生物が棲みつき、生命を育むことから「海の熱帯林」と呼ばれている。
壱岐・対馬海域のサンゴ礁は世界最北限に位置し、壱岐海域には球体状の塊を形成するキクメイシ属を中心にエダミドリイシなど約30種類のサンゴが確認されている。
環境省が長期的視点で自然の生態系を定点観察する「モニタリングサイト1000」のサンゴ礁の調査では、全国24か所のうち壱岐も3か所(今回の2調査地点含む)が指定されており、同省は毎年、生息状況を確認している。
黒崎半島周辺のサンゴ礁は厚さが8㍍に及び、過去の調査で少なくとも約2750年前から生息していることが分かっている。しかし、サンゴ礁の中心部まで測定できなかったことや対馬の調査では約4300年前の縄文時代から生息していることが分かっており、壱岐のサンゴもさらに2千年ほど遡る可能性もある。
これまで黒崎半島周辺に千平方㍍、半城湾内に3百平方㍍のサンゴ礁が確認されていたが、今回の調査で半城湾内の別の場所にも生息が確認された。
壱岐のサンゴは日本南方のものに比べ密度が低いのが特徴で、水温が低い中でエネルギーのほとんどを成長に使い「2千年以上ギリギリ生きている状態」(山野さん)で世界的に珍しいという。
山野さんは「攪乱もなく安定した環境が保たれてきた証拠」とした上で「(保全は)法的な枠組みではなくても、地元の人が大切なものと認識することが大切。海洋環境を守り、活用と保全の仕組みを考えていかなければならない」と話した。