島根半島の沖合に浮かぶ隠岐諸島では、団体客の激減で観光産業が衰退し、民宿では事業者の高齢化や後継者不足によって廃業する施設も相次いでいる。一方で、小さな民宿にこそ、旅行者が求める“島の営み”を凝縮したサービスもある。
隠岐諸島の島前にある中ノ島の海士町では、島内の民宿再生を目指した「島宿」プロジェクトを立ち上げた。観光協会のスタッフが島内の全宿泊施設に実際に泊まる研修を実施し、地元の郷土料理や体験メニューをスタッフ自ら体感。伝統的な民謡や方言など、残しておきたい島の財産が“民宿にこそ残されている”ことを確認できたそうだ。また、同時に明らかになったのがサービスの課題。清掃や配膳などに同スタッフが積極的に参加することでレベルアップを図り、タイアップする民宿を「島宿」という商品名で販売する試みがスタートしている。
隠岐島では、施設の清掃基準や島素材を使ったアメニティの開発や島らしさの演出など、独自の「島基準」を設定。安心して足を運んでもらうとともに、とかく先入観のある“民宿”というジャンルを超えた「島宿」カテゴリーの創造を目指している。
お客様に安心して快適な空間を提供するために、今後、「安心安全」を掲げた清掃研修や「ひと手間かけた演出」を目指し、専門家と連携しながら品質向上に向けた取り組みを行うという。
壱岐島では近年、全国レベルの催事や大会、しまとく通貨効果による交流人口増が期待されているが、耳の痛い話を聞いた。観光客の感想の中に「壱岐の料理は良かったが、宿泊するには最低の島ですね。部屋にセミの死骸や畳の汚れ、トイレの異臭もあった」というものだ。
市観光連盟は宿泊施設やサービス業向けのおもてなし講座など、施設をレベルアップさせるための企画を開催しているが、参加する施設は限られているという。
和歌山県では、宿泊施設を対象とした覆面調査を「平成25年度おもてなしレベルアップ検証」として実施し、現状の課題を共有。観光地におけるおもてなし力を向上を図る事業を行っている。
おもてなしの心なくして、壱岐へ何度も訪れる島にはならないだろう。