壱岐で過去最大となる398㌔の巨大クロマグロが10月26日、勝本漁港で水揚げされた。
超大物を見事に漁獲したのは、勝本町漁協に所属する進和丸(8・1㌧)の原田進船長(69)。同日午前9時45分ごろ、一人で「七里が曽根」で曳き縄釣りをしていたところ、「これまでには経験したことがないアタリを感じた」。合わせると一気に400㍍ほど走り、釣り糸の残りが少なくなる程だった。
40分間も竿が曲がったまままったく動かない状況が続き、その後は100~150㍍の間で何度も攻防が続いた。ようやく漁船まで寄せることができたのは午後1時15分。3時間半に及ぶ格闘だった。
原田さんは、この時点ではこれほどの大物だとは気が付いていなかった。「えい航してきたが、頭しか見えていないので、200㌔程度かと思っていた」。漁師歴55年目の大ベテランだが、これまで釣り上げた最大のマグロは160㌔だったので「それよりは大きいだろう」としか感じていなかった。
だが漁港に戻ってクレーンで吊り上げると、周囲は騒然となり、すぐに黒山の人だかりとなった。全長270㌢、胴回り216㌢。この時点での重量は450㌔を超えていた。鰓(えら)、内臓を外す処理をして408㌔あったが、東京・築地に到着した時点での重量は398㌔に減ったため、正式にはこの重量が記録となった。セリ値は28日の築地市場・中央魚類で1㌔当たり3000円で取引された。
勝本漁港で記録が残っている最高重量は、06年の349㌔で、この記録を8年ぶりに約50㌔も更新したことになる。勝本漁港の今シーズンのマグロ漁は好調で、10月18日にも343㌔の超大物が漁獲され、10月だけで100㌔以上は計6匹の水揚げを記録している。
原田さんは「とにかくビックリした。釣り上げられたのは、凪でうねりもまったくない好条件だったからでしょう。時化ていたら絶対に上げられなかった」と格闘を振り返った。また「ザイロンという合成繊維のハリスはまったく切れない。道具の進化にも助けられました」。
この快挙は、マグロ漁全体へも影響を及ぼしそうだ。「燃料費が高くて漁師はみんな大変な思いをしているが、地道にやっていればこういう大物に巡り合うことがある、ということを示すことができた。勝本を元気にする、神様からの贈り物だと思っています」。原田さんは釣り上げた針、ハリス、釣り糸を木箱に入れて神棚に飾り、毎日手を合わせている。