一支国博物館の第38回特別企画展「司馬遼太郎と壱岐」が3日、1階テーマ展示室で開幕した。来年1月3日まで。入場無料。
小説家の司馬遼太郎(1923~1996)は、その代表作の「街道をゆく」の週刊朝日連載の取材で、昭和52年11月17~18日に壱岐を旅行。唐人神、雪連宅満の墓、岳の辻、壱岐郷土館、カラカミ遺跡、国分寺、河合曾良の墓、神皇寺跡などを挿絵画家の須田剋太らとともに巡り、その様子を同誌の昭和53年2月3日号から8月25日号に掲載。「街道をゆく」単行本第13巻にも対馬とともに収録された。須藤正人館長は「壱岐を大作家がどのように表現したのか、その文章を通じて市民に知ってもらいたい。ルート順に20か所を須田画伯の挿絵原画、現在の写真とともに、司馬の文章の一部を添えて展示しており、司馬の表現を身近に感じながら観覧してもらえると思う」と説明した。
展示は他に、入口には大阪・司馬遼太郎記念館の高さ11㍍の大書架のうち7㍍程度を写真パネルで再現。同記念館から特別に借り受けたバンダナ、灰皿、原稿用紙と万年筆の愛用品、略歴と作品年譜のパネル、街道をゆく日本地図、文庫本・単行本の作品の一部など、展示室は司馬の世界で埋め尽くされている。「開館以来、ずっとこの展示をしたかった」という須藤館長には特別な思いがある。
「街道をゆく」壱岐編には、40年前の須藤館長が「須藤青年」として何か所も登場しているためだ。司馬がトイレを借りるために立ち寄った勝本町教育委員会で、当時職員だった須藤館長は司馬に道を尋ねられ、勝本町などの各所を一緒に案内した。「以前から司馬の小説が大好きで読んでいたので、司馬が突然顔を見せた時には本当に驚いた。あの時の感激があったから、いまの仕事をしているような気がするし、あの出会いがなければもちろん今回の企画展もなかったと思う」と須藤館長は感慨深い思いに浸っている。須藤館長からの要請なので、記念館も門外不出の愛用品を一支国博物館に貸し出すことを承諾した。1泊2日という短い期間の司馬の壱岐取材旅行が、須藤館長をはじめ多くの壱岐市民にもたらした影響の大きさも、この展示から垣間見えてくる。
1階ミュージアムショップでは、記念館のみで販売されている「二十一世紀に生きる君たちへ」を特別販売する。また11月19日には週刊朝日編集委員の村井重俊さんを講師に講演「最後の担当編集者が語る司馬遼太郎さんの素顔『街道をついてゆく』6年の旅」が、12月24日には須藤館長による特別講座「壱岐と司馬遼太郎先生」が行われる。