勝本町のカラカミ遺跡で、日本最古のイエネコの骨が発見されたことが確実になった。2011年の壱岐市による発掘調査で約2千年前の弥生時代後期半ば(紀元1~3世紀)の遺構から発見された1882点のうち、723点の分析が奈良文化財研究所で行われ、このうちの1点がイエネコの橈骨(とうこつ=前腕の骨)であることが判明した。今後、別の研究機関で科学的な年代測定が実施されてから、10月にも正式に発表されるが、日本のイエネコの起源がこれまでよりも500年程度も遡る、歴史を塗り替える極めて貴重な発見となる。
発掘されたイエネコの骨は、現在検査を行っているため、一支国博物館に展示はされていないが、カラカミ遺跡を紹介する常設展示のコーナーに、写真と「歴史を塗り替えた日本最古のイエネコの骨」という解説プレートが置かれている。
これまで各種文献から、イエネコの伝承は8世紀と考えられており、出土例では神奈川県鎌倉市の千葉地東遺跡など2か所から、13世紀(鎌倉時代)の骨の発見が日本最古の事例だった。近年の発掘調査でネコの足跡がついた6世紀末~7世紀初頭の須恵器の発見により、イエネコの起源が古墳時代まで遡ることが推定されていたが、今回のカラカミ遺跡からの発見で、弥生時代からイエネコが飼われていたことが判明した。
カラカミ遺跡では2008年の九州大学による調査でもネコの骨が13点発見されており、当時は「日本最古のイエネコの骨発見」と一部で報道されたが、発掘された場所は時代が特定できる遺構内ではなかったこと、成熟前の小柄なものだったため小さなヤマネコであった可能性がぬぐい切れなかったため、確証は得られていなかった。
だが今回は、他の遺物などから時代のはっきりとした遺構の中からの発掘であり、成熟した大きさの前腕の骨であることから、発掘当時から日本最古のイエネコである可能性が極めて高いと思われていたが、分析によりほぼ確証が得られた。
市文化財課の松見裕二学芸員は「九大が発掘した骨とともに、科学的な年代分析結果が出たら、博物館で展示・報告を行おうと思っている。今後は、カラカミ遺跡でネコがどのような飼われ方をしていたのか、ネズミ対策だったのか、その他の用途だったのかなど、さらに調査を進めていきたい」と話した。
ネコの愛好家は数多くいるだけに、日本最古のイエネコが壱岐で発掘されたニュースが広まれば、一支国博物館を訪れたり、壱岐に興味を持つ愛猫家が増えることは確実で、「イエネコの島・壱岐」というキャッチフレーズも加わりそうだ。