第88回センバツ高校野球大会(3月20日から甲子園球場)の出場32校を決める選考委員会が1月29日、大阪市の毎日新聞大阪本社で開かれ、本市出身の小畑翔大外野手(2年、石田中出)がキャプテンを務め、土谷一志投手(2年、郷ノ浦中出)が右のエースを担う海星(長崎市、清水政幸校長、1226人)が15年ぶり5度目の出場を決めた。2人は「甲子園で活躍することで、育ててもらった壱岐に恩返しをしたい」と故郷への感謝の気持ちに口を揃えた。
選考を告げる電話は同日午後3時37分に同校校長室にあり、清水校長が「ありがたく、お受け致します」と返答。その後、待機していた野球部員70人に校長から報告された。昨秋の九州大会準優勝で、4枠ある九州代表の座は確実な状況だったが、それでも「夢の甲子園」を現実のものとしたことで、選手たちは喜びを爆発させた。
テレビカメラ7台、約50人が押し寄せたマスコミの要求で、ガッツポーズ、帽子投げ、ジャンプ、胴上げなど撮影のための段取りは、すべて小畑キャプテンが仕切った。マスコミ各社が撮影できるように、何度も何度も同じことを繰り返す。部員たちはどうしてもだらけてくるのを、小畑キャプテンが一喝して、まとめ上げた。
写真撮影後のインタビューも、加藤慶二監督とともに壇上に上がり、個別に撮影するテレビ各社からの同じ質問に嫌な顔を見せることなく、丁寧に答え続けた。
「みんな、決まる前からソワソワしていて、まとまりがなかったように見えたかもしれませんが、明日からはきっちり締めていきます。マスコミ対応は大変ですが、甲子園出場は自分たちの力だけでなく、家族、友人、みんなの協力で成し得たことなので、マスコミを通じてみんなに感謝を伝えることも、選手として重要なことだと理解しています」と小畑キャプテンは逞しく言い切った。
チームを任されて半年、日に日にチームリーダーとしての自覚を増してきている。石田中時代も、離島甲子園で日本一となった壱岐市選抜チームでもキャプテンを務め「キャプテンとしての役割には慣れているし、その方が落ち着く」と海星でも自ら志願してチームのまとめ役を買って出ただけあり、チームの先頭に立つ姿はまさに水を得た魚だった。
九州大会決勝で秀岳館(熊本)に2‐13と大敗した。「悔しくて悔しくて。その思いをバネに、冬場に各自がレベルアップを図ってきた。自分自身もウェートトレーニングでパワーアップした。レギュラー争い、ベンチ入り争いもさらに激しくなっている。秋とは違うチームの気持ちで、ピークを甲子園に合わせて勝ちに行く。もちろん日本一が目標です」。
海星は、夏は1976年の4強があるが、春はこれまで4度の出場で1勝もしていない。まずは歴史的な1勝へ向けて、小畑キャプテンがチームをけん引していく。
人間力も増した
右のエース・土谷
土谷投手にとっては1年夏のベンチ入りに続いて、2度目の甲子園出場となる。前回は初戦の2回戦で二松学舎大付に5‐7で敗れた。エース石場巧が4回途中で6失点降板したため、早くからリリーフとして肩を温めていたが、2番手吉田嵩が好投したこともあり、出番はやって来なかった。「甲子園のマウンドで投げたかった。絶対にここに戻ってくると誓った」。「甲子園の土」も持ち帰らず、この日が来ることを確信して待っていた。
あれから1年半が経過し、投球術、体力はもちろん向上したが、それ以上に精神面での成長が大きかった。「ひじを痛めて投球ができず、外からチームを見ていた時に、チームは選手だけでなく、本当に多くの人に支えられて成り立っていることを痛切に感じた。野球ができることに対して、感謝の気持ちがあふれてきた。なおさら結果を残して、支えてくれているみんなに恩返しをしたい思いが強くなった」。挫折を糧にして、人間として強さを増した。
土谷投手がけがから復帰したばかりの秋季大会は、左腕・春田剛志投手が背番号1を付け主に先発をしたが、加藤監督は「本来のエースは土谷」とその能力を高く評価している。「春田の存在はもちろん意識している。自分が投げる時は、自分がエースだと思っている。チームのために粘り強く投げたい。独特の雰囲気の甲子園は、自分のプレーができない場所であると同時に、自分の力以上を出せる場所だとも思っている。1度甲子園を経験したことが活かせるはず。もちろん日本一を狙います」と力強く言い切った。
甲子園応援ツアー
壱岐の有志が企画
離島の壱岐市出身で、離島甲子園で全国離島の頂点に立った2人が、今度は本当の甲子園で暴れまくる。その話題性は、NIBニュース番組で特集が組まれたほどだった。
壱岐でもすでに2人のジュニア時代の監督、コーチ、保護者らが「祝甲子園出場小畑君土谷君を応援する会有志一同」という応援のためのフェイスブックページを立ち上げ、甲子園への応援ツアーも企画している。3月11日の組み合わせ抽選、20日の開幕へ向けて、壱岐も大いに盛り上がってきた。