壱岐市から県に対しての要望活動が10月31日、県庁特別応接室で行われ、市側からは白川博一市長、豊坂敏文市議会議長、山本啓介県議らが、県からは中村法道知事、関係部長らが出席した。白川市長は要望の一番手として4年連続で壱岐空港の滑走路延長のための調査費の予算確保を求めたが、中村知事は「滑走路延長には巨額の費用が必要」「国の支援を求めるためには具体的な就航見込みや確実な用地確保などが必要」などの理由から「現時点での調査費計上は非常に難しい」と今年も難色を示した。柿本敏晶企画振興部長はORCなど九州の地域航空3社とANA、JALの5社が10月に設立したLLP(地域航空サービスアライアンス有限責任事業組合)の動向を見ながら、ATR社(本社・フランス)製航空機の導入に強い関心を示していることを明らかにした。
白川市長は「現在運航しているボンバルディアQ200型は更新時期を2020年から22年に迎える。同機種はすでに製造が中止されている。後継機として1機はQ200型機の中古を今年度に導入予定だが、2機目の検討機種となっているQ400型機を運航するには滑走路延長1500㍍、滑走路幅45㍍が必要で、現在の壱岐空港での運航は困難な状況だ」と現状を説明。
その上で「離発着距離が短いATR機の導入も検討されているが、将来の壱岐の空路存続維持のためには、検討されているどの機種でも離発着できる滑走路の整備が必要。実際に、県内離島空港で運航されたFDA(フジドリームエアライン)のチャーター便は、壱岐だけ誘致できなかった。現状の1200㍍滑走路では福岡、関西方面からのチャーター便は誘致できない」と航空路確保だけでなく、壱岐振興の将来も考えて訴えた。
中村知事の回答はこれまでと同様に滑走路建設の費用面から「難しい」というもので、「後継の1機となるQ200型機は中古のため、令和5年度が退役の見込みとなる。もう1機は来年度以降に導入するが、さらにQ200型機の中古というのは難しい。ATR42型機(42席、離陸滑走距離1025㍍、着陸滑走距離1126㍍)を検討している。LLPでもATR社で機材統一する検討がされており、LLPの動向を注視しながら、後継機を検討していく」とあくまでも後継機種の選定による航空路の維持にこだわった。
柿本部長も「2機目はLLP次第となるが、まずはATR機を1機導入するという考え方が中心になるのではないか。中古で導入するQ200型機の後継は今後4年間のうちに判断する。ORCの2機体制に空白期間を作ることはできないので、Q200型機は予備機材として残すことも考えている」と今後のスケジュールについて語った。
知事との意見交換後、白川市長は「ATR機の導入、運航にはパイロットや整備の面で課題が多いが、導入が決まれば航空路維持という面では一歩の前進になる。だが、壱岐の振興・発展、特に観光振興を考えると、定期航空路だけでなく、チャーター便の離発着ができる滑走路がどうしても必要で、このままでは五島、対馬から大きく遅れを取ってしまう。今後も粘り強く、滑走路延長を訴えていく」と話した。