壱岐市から県に対しての要望活動が17日、県庁本館特別応接室で行われ、市からは白川博一市長、小金丸益明市議会議長、山本啓介県議らが、県からは中村法道知事、関係部長らが出席した。白川市長は今年4月から施行された有人国境離島法に基づいて、現在1200㍍の壱岐空港滑走路について、後継候補の機種ダッシュエイトQ400(定員74人)の運用が可能となる1700㍍以上に延長することで交流人口拡大、安定した空路維持を要望するなど、8項目に関する要望書を県に手渡した。だが中村知事は「滑走路延長工事には莫大な費用が掛かる。費用対効果を考えた場合、現実的には難しい」と厳しい回答に終始した。
壱岐空港滑走路延長に関しての要望は、8項目の要望の中で昨年に続いて第1番目に取り上げられた。白川市長は「壱岐空港をはじめ県内各空港や福岡空港間で運航されている航空機ダッシュエイトQ200(定員39人)は製造中止されており、Q400が後継機種として選定の候補になっているが、現在滑走路延長1200㍍、幅30㍍の壱岐空港で運航するためには重量制限しなければならず、現実的に困難な状況。このままでは壱岐の空路が途絶えるなど極めて厳しい状況に陥ることが予想される」と訴えた。また「空路存続は市、市民生活にとって極めて重要な案件であり、国境離島の保全という観点からも空路が途絶えることは我が国にとって憂慮する事態。市国境離島民間会議委員を中心に、官民一体となった壱岐空港整備期成会(仮称)の設置を進めている」と市の取り組みを説明した。
だが中村知事は「確かに滑走路延長は将来を見越した場合に必要だが、平成16年の試算では海上埋め立ての場合350億円、滑走路を西側にシフトした場合に190億円という莫大な費用が掛かる。長崎‐壱岐路線の搭乗率は昨年は6割を切っており、今年は6割をやや上回っているものの、平均20人程度の搭乗者数だ。Q400も搭乗者数を半分に減らせば離着陸できるはずで、そういう手法も含めて方向性を考えなければならない」と滑走路延長には否定的な見解を示した。白川市長はさらに「県の考えは判るが、有人国境離島法の目指している交流人口拡大は、長崎路線だけではなく、首都圏、関西圏などとのアクセスも必要になる。航空会社の採算ベースは搭乗率60~65%であり、Q400の定員を半分にすればいいというものでもない」、また山本県議も「島民は空路がなくなってしまうことに不安を感じている。国境離島新法の施行で新しい動きが島内で起きており、実を結べばインバウンドも含めて搭乗率は伸びていく」と検討を促した。
中村知事は「搭乗率が伸びているのは理解しているし、離島に空港がなくなっていいとは思っていない。だが昨年の満席は53便だけで、Q400の半分ではとても足りないという状況にならなければ、B/C(ビーバイシー=費用対効果)が生まれない」と前向きな発言はなかった。会談後、白川市長は「交流人口拡大策をさらに進展させながら方向性を検討し、県、国に粘り強く交渉していく」と話した。
避難計画見直しも原発事故発生時
2番目の要望となった勝本港に関連する施設整備は、玄海原発に事故が発生した場合、壱岐市最北端に位置する勝本港が避難拠点港として極めて重要な役割を担うことから、白川市長は大型輸送船や大型船舶が接岸できる岸壁の整備と周辺施設整備、国道382号線の路肩拡張や見通しの悪い区間の改良工事などを要望した。
これに対して中村知事は、現在の勝本浦地区では水域などの確保が難しいことから「港湾整備をできるのは天ヶ原地区しか選択肢がないように思われるが、外洋に面しているため水深の深いところに防波堤を設置する必要があり、膨大な事業費と時間が必要になる」と空港滑走路同様、事業費の面で難色を示した。その上で「全島避難になることの島民の心配は十分に認識している。勝本港だけを整備しても、避難時間の短縮は現実的に難しい。その前に既存の港を7・5㍍岸壁にして、水深も深くするなどして活用しながら、避難する方策を国とともに考えていくべきではないか」とUPZ30㌔圏内の郷ノ浦港、郷ノ浦大型客船岸壁、印通寺港などの整備・活用を提案した。
それ以上の言及はなかったものの、中村知事の提案は現在の「まずは30㌔圏外に避難し、その後の状況で島外避難を考える」という国の原子力防災計画とは相違するもので、原発事故が起きたらすぐに全島避難する方向で計画を見直していくことを示唆するものとなった。