10日投開票の壱岐市長選挙が3日告示され、3人が立候補を表明した。その政策、理念などについてのインタビューした。(掲載は届出順)
白川博一さん(65)インタビュー
―出馬表明の動機は。
白川 行政は継続が力である。国境離島新法が衆議院に提出されて、成立へ向けて大詰めを迎えている。島民の悲願である航路運賃低廉化、漁業燃油補助、雇用拡大など、新法の持つ意味は極めて大きい。成立した後も、平成29年4月1日の施行までに、予算を獲得しなければならない。その過多によって勝負が決まる。この2期8年で政府などに対して、様々な人脈を形成してきた。壱岐市長として、全国離島振興協議会会長として、いま辞めるわけにはいかないという強い思いが、出馬表明の最大の理由だ。
―今後の市政でもっとも力を入れていきたいことは。
白川 やはり人口減少問題だ。市総合計画、まち・ひと・しごと創生人口ビジョン・総合戦略を昨年策定したが、計画というのは実現しなければ意味がない。実現へ向けて舵を取る、政治家としての使命感がある。2060年に人口1万8千人を維持できるような道を切り拓いていく。人口を増やすには婚活を進めること、安心して赤ちゃんを産んでもらうことが大切で、中学までの医療費無料化、保育園の第2子以降の無料化、給食費の負担軽減など子育て環境の充実に力を入れていく。
―2期8年の実績として強調する点は。
白川 農業、漁業振興は8年目にしてようやく成果が表れてきた。光ファイバー網の敷設は46億円の事業だったが、市の負担は1億7千万円で済んだ。東京と変わらないブロードバンド環境ができたことで、いまウェブアプリ養成塾で若者が起業を目指しているし、病院の電子カルテシステムも島内、そして本土と結ぼうとしている。壱岐ビジョンを通して行政と市民の垣根も低くなった。市民病院の県病院企業団加入が実現し、九大医学部第2外科からの医師派遣も復活。4月からは麻酔医も来てくれるので、島内での盲腸などの緊急手術も可能になる。外科医をもう1人お願いしているので、実現すれば本格的な手術も可能になる。
―庁舎建設に関する住民投票の結果を改めてどのように考えているか。
白川 私にとっては大きな試練だった。合併特例債の期限が延長となり、委員会の答申を受けて建設を議会に提案。議会でも反対は1人だけだった。それでもサイレント・マジェスティがあるかもしれないと思い、また市民の中でも住民投票を求める動きがあったので、市民に動揺を与えてはいけないという思いから、住民投票を決断した。投票率が6割以上なら結果に無条件に従うと約束した通り、建設は取り止めた。提案自体には私も、議員も、市民の声を十分に聞けていなかったとの思いもあるが、後に「なぜ合併特例債が活用できる時に提案をしなかったのだ」と言われるような、不作為の罪は犯したくなかった。
―2012年に心臓の手術をしたが、健康に不安はないか。
白川 心臓弁膜症の手術をしたが、人工弁を使わないで自分の弁で形成できた。医学の発達は素晴らしい。食べ過ぎないようには注意をしているが、4年前よりも元気だ。
武原由里子さん(51)インタビュー
―出馬表明の動機は。
武原 壱岐市になって12年。壱岐がどんどんと沈んでいく気がする。閉塞感が漂っている。壱岐に来て26年が経つが、この大好きな宝の島が沈むのはもったいない。トップを変えるべきだとの思いで、出馬を決意した。
―現職に対しての不満点は。
武原 市庁舎建設問題は住民の声を市長が聞いていないと感じた。市長の出身である芦辺町に偏った人事が見受けられる。要職の多くが芦辺の人で、他町の職員はやる気をなくして退職した人もいる。これは市にとって大きな損失だ。公平公正な市政が運営されないと、市民は納得しない。
―どのような壱岐市を作りたいのか。
武原 豊かな島なのでまだ住民の危機感は薄いが、人口が2万8千人を切って消滅の危機にある。人口問題が一番肝心だ。私は26年間にわたって子どもたちに関する仕事をしてきた。子どもたちの笑顔が輝く島にしたい。島に活気を与えるのは子どもだし、高齢者を支えるのも子どもだ。
―その主な具体策は。
武原 出産祝い金として第2子20万円、第3子50万円、第4子以降100万円を給付する。幼児保育の充実を図るとともに、中学卒業までの医療費無料化を目指す。
ふるさと納税は今年は1億円と伸びてはいるが、平戸市は20億円を集めている。壱岐にもできないことはない。専門の担当者を配置し、島内外の産官学民の英知を結集して、20億円を目指す。
―行政経験がない点で不安はないか。
武原 逆に「一市民」である点が現職との大きな違いだ。住民にとって何が大切なのか、住民がより良く暮らすためのサービスは何なのか、一市民であるからよく判ってる。
いまの行政には「すぐやる」「まずやる」というスピード感が足りない。行政の内部にいると住民ニーズが判らないのではないか。市長目安箱設置や出前市長室など島内を回っていろいろな声を聞くことが必要だ。定例記者会見を行い、積極的に情報公開を行う。
行政経験がないからこそ、しがらみもまったくない。知らないから言えることも武器になる。
―女性であることの利点は。
武原 いままで男性社会だった。だが市民の半分は女性である。生活、家庭を内から支えているのは女性であり、女性の意見がもっと通らないとおかしい。女性だから気付くこと、生活者の視点がある。子育てをやっていない人が政策を作っても、ちぐはぐなものになってしまう。
―選挙戦へ臨む意気込みは。
武原 これまでの壱岐の選挙は地縁、血縁、同級生が票を左右していた。そのいずれもない私にとっては大きなマイナスからのスタートだが、それだけにこれで私が勝ったら、壱岐は大きく変わる。壱岐がチェンジするためのラストチャンスになると思っている。
坂本和久さん(51)インタビュー
―出馬表明の動機は。
坂本 子どもの時、近所の年上の人に遊んでもらっていたが、ある日突然、いなくなってしまった。働く場がないことが理由だと知り、8歳の頃から将来は政治家になりたいと思っていた。
2007年県議選に出馬後、事情があって9年間壱岐を離れていたが、支援者や同級生から「いまの壱岐はおかしい。市長のやりたい放題になっている。議会も機能していない」という声を聞き、出馬を決意した。
―現市政のどの部分にもっとも不満があるのか。
坂本 庁舎は住民投票の否決で造らないことになったが、民意を無視して、合併特例債を使った方が良いとして、造ろうとしたことは先走った考えだった。
―公約に市人件費の大幅圧縮を掲げているが、職員給与を削減するのか。
坂本 公約の一丁目一番地が行革だ。給与削減は地方公務員法もあってなかなか難しい。まずは市長自らが給与30%カット、退職金50%カットを行う。現在の市長給与は前大阪市長と同じ80万円だ。
市民とかい離した職員の精神面での改革を行い、「株式会社壱岐市役所」を目指したい。市長直通の目安箱を設置し、市民の苦情や提案を直接、市長に寄せてもらう。
―壱岐活性化には何がもっとも重要か。
坂本 観光が潤えば、農漁業も潤う。島外の壱岐出身者、壱岐ファンを壱岐の宣伝マンにして、もっと外へ打って出ることが活性化につながる。
―国会への提出が間近に迫った国境離島新法案についてはどのように考えているか。
坂本 7色の法だと考えている。いろいろな使い方があるという意味だ。どの部分を壱岐に引っ張ってくれば良いのか、まだ成立していないので判らないが、利用できる部分は利用する。
―選挙戦はどのような戦い方をするのか。
坂本 毎朝、辻立ちを行っている。立っていると、その日の市民の顔、表情が見えてくる。通る車の台数は9年前に比べて半減している。皆さんの「生活ができない。出て行くしかない」という悲痛な叫びが聞こえてくる。市長になってもこの辻立ちは週1回続けたい。
選挙戦は徹底的な草の根運動になる。父、母、私で5千枚のビラを2週間で配った。過去2回の県議選も、組織や後援会なしで戦って票を集めてきた(2003年6123票、07年3564票)。
―他の立候補予定者と比べて優っていると思う点は。
坂本 国会議員秘書を12年間してきたことで、友人に大臣、副大臣がいる。国政に直接のパイプがある。
―選挙の争点は。
坂本 争点というものはない。市民を重視し、その声に耳を傾ける政治をしたいという思いは、3候補とも同じではないだろうか。
壱岐の選挙は地縁、血縁、コネが重要だが、それがない私がこの選挙に勝てば、民主主義の始まりになる。