長崎しまの芸術祭「アーティスト・イン・アイランド@壱岐2019」の作品展示がこのほど、市内各施設で行われた。一支国博物館ではフランスのバンド・デシネ(漫画)作家のカトリーヌ・ムリスさん、ヴァンサン・ルフランソワさんの作品が16日まで、3階多目的交流室で展示され、13日にはルフランソワさんら3人の作家によるアーティストトークが開催された。
ルフランソワさんとムリスさんは、作品創作のため昨年10月に壱岐を来訪。ムリスさん(39)は1週間滞在し、猿岩、小島神社、勝本浦の街並み、鬼凧の工房、イカ釣り漁船の漁火、稲刈りなど壱岐の名物や伝統文化に触れ、スケッチをした。ムリスさんは「いわゆる日本の観光地ではない場所で、伝統、文化、生活に触れることができた。日本では普段通りの生活の中に、想像力がかき立てられる景色が多くあった」とその場でスケッチを行い、水彩画で作品に仕上げた。
ムリスさんは2015年1月にパリで起こった、イスラム過激派テロリストによる出版社シャルリー・エブド襲撃事件で多くの仲間を失った。ムリスさんも同社に勤務していたが、私用で外出しており、間一髪で難を逃れた経験がある。「とても悲しい出来事で、その後1年は何もできなかったが、次第に生きる喜び、笑う喜び、絵を描くことの喜びを取り戻すことができるようになった。このように異文化に触れることは、元気を取り戻す後押しになっている」と、ムリスさんの作品の中には当たり前に生きていることへの感謝の気持ちも込められた。
壱岐在住の書道家グウ・ナカヤマさんの作品展は19日まで小金丸幾久記念館2階アートギャラリーで開催されている。