21日の市議会定例会6月会議で総合整備計画策定の議案が可決され、通信基幹施設整備に3300万円(うち3130万円が辺地対策事業債の予定)が計上された。これは老朽化し、容量も小さかったBAS(ブロードバンド・アクセス・サーバー)を更新する工事を行い、市民から不満が多かった夕方から夜間のインターネット通信速度の改善を図る取り組み。整備計画は29年度から33年度までの5年間だが、市政策企画課は「今年度中にも工事に着手する予定」との方針を示した。
市民からは「家庭での通信量が増大する午後6時を過ぎると、深夜までインターネットでの動画再生がほぼできない」、観光客やビジネス客からは「IKi CITY Wi‐Fi(壱岐市公共施設フリースポット)が混雑していて接続できない」などの苦情が、市、市ケーブルテレビ、市観光連盟などに多く寄せられていた。本紙読者からも同様の声があり、その数は年々増える一方だった。
多くの市民が市ケーブルテレビで加入している「ファミリーライト30」(月額3080円)は最大速度が上下とも毎秒30メガビット、ヘビーユーザー向けの「ファミリー100」(同4110円)は同100メガビットの契約プラン。
だがともに「ベストエフォート型」と記されており、これは「最大限の努力はするが最低速度を保証しない」という意味であることを知らない市民が多い。
また両プランは上限に違いがあるだけで、「ファミリーライト30」から「ファミリー100」に乗り換えても、遅い通信速度が上がるわけではないこともあまり知られていない。
通信速度はユーザーの利用環境、機器、そしてネットワークやサーバーの混雑状況で大きく変わるため、本紙記者が有線LAN接続、Windows10、Core‐i5、メモリー8ギガの機器を用い、ファミリーライト30の契約で数日間にわたって通信速度を測定したところ、もっとも遅い時間帯では下りが150㌔ビット(約19㌔バイト)しか出ていない日があった。これは最大速度の20分の1である。
ADSLは1~50メガビット、ISDN2回線利用で128㌔ビットなので、ほぼISDNに近いレベルの速度しか出ていなかった計算になる。この通信速度では、インターネットアクセスはかろうじて成立したものの、動画は当然ながらまったく再生されなかった。
通信速度の遅さに対して、市ケーブルテレビは番組審議会などで「ヘビーユーザーの総量規制を行うなど改善の努力はしているが、加入者数の増加、スマートフォンの急速な普及でなかなか回線の混雑が解消できない」などと説明していた。だが一方で、無線ルータ「Fon」を無償で貸与するなど、さらに混雑に拍車を掛けるサービスも行っている。
今回の計画ではBASの容量をこれまでの1ギガから10ギガに増加するため「帯域に余裕ができ、処理能力が高まることを期待している」と市政策企画課は説明している。
白川博一市長は「全島に光ファイバー網を敷設していることが壱岐の最大の特徴。『インターネット無料の島』『都会と変わらない通信環境』を売りにして、テレワークやサテライトオフィスの設置で人口減少に歯止めをかけたい」と強調しているが、スカイプなどでのテレビ会議に支障が出る通信速度では、計画がとん挫する恐れすらある。
またIoT(モノのインターネット)などWi‐Fiを活用する機器は今後さらに増加することが確実なだけに、一刻も早いBAS更新工事の着手、さらに将来的には光ケーブル施設の根本的な見直しも求められる。