IT産業が盛んなインドの企業2社と、こころ医療福祉専門学校壱岐校にインド人留学生を仲介している一般社団法人シルバーピークジャパン(長崎)の一行10人が17日、白川博一市長を表敬訪問した。シルバーピークの仲介により、2社が今年中に壱岐市内に事業所を開設する計画であることを明らかにし、白川市長に協力を求めた。他にもインドのIT系3社が壱岐進出を計画しており、壱岐とインドの交流が一気に深まりそうだ。
壱岐市とインドのIT企業を結びつけたのは、本市選出の山本啓介県議。昨年、IT産業の世界トップが集うインド南部のバンガロールを訪れ、本県への企業誘致、企業間連携に奔走。在日インド大使館幹部やIT企業代表団らを本県に招いて話を進め、今回の表敬訪問を実現させた。年内の壱岐進出を表明したのはシルバーピークと交流があるインドのIT企業「3ESSエンタープライズ」「ラピード」の2社。3ESS社はAI(人工知能)やVR(仮想現実)の開発など、ラピード社はファッションや大学スポーツのアプリ開発、キッズプログラミング教育などに取り組んでいる。
山本県議によるとインドのIT関係者は日本進出に意欲的で「長崎は、長崎ウエスレヤン大学に昨年10月から38人のインド人が留学しており、つながりが深い。IT産業は拠点が地方、離島であっても光ケーブル網があれば仕事ができるため、いきなり首都圏への進出ではなく、誘致に熱心で受け入れ態勢が整い、国境離島新法による優遇措置などがある離島に興味を持ってくれた。壱岐の場合はそれに加えて、こころ医療壱岐校の留学生をシルバーピークが仲介したこと、福岡に近いことなどが興味を持ってもらえた一因になっているのではないか」と話した。
両社はすでに、来日予定のエンジニアに日本語を勉強させており、また英語やプログラミングに精通した日本人の人材を雇用する考えもある。また、シルバーピークによると、他にもIT企業3社が壱岐での事業所設立を計画しているという。計5社の進出が実現すれば、壱岐が「日本のシリコンバレー」として世界的な注目を集めることも夢ではない。白川市長は拠点施設として壱岐テレワークセンターの活用などを提案。「インドのIT産業進出の意義は極めて大きい。ビッグチャンスだと思っている。具体的な内容はこれから煮詰めていくが、信頼関係を構築しながら協議していきたい」と歓迎の気持ちを示した。
一行は壱岐訪問の前日の16日には県庁で、水処理プラントメーカーの協和機電工業(長崎市)、IT企業のNDKCOM(同市)と交流組織づくりに向けた取り組みを始める覚書を交わしており、長崎県との結びつきも一層深めていく。インドIT企業の壱岐進出は、単に本市への事業所開設、関係人口増加、雇用拡大にとどまらず、インドとの付き合いを通して本市と長崎県本土との結びつきを深める効果も期待できそうだ。