市が雇用の場確保策、主婦など女性の新しい働き方改革として大きな期待をかけて実施するテレワーク事業(光ファイバー網を活用して、都市部の仕事を場所や時間にとらわれず行う働き方)拠点施設「市テレワークセンター(仮称)」の建設が、芦辺町の原の辻ガイダンス横の倉庫を改修して進められている。すでに内装工事は終了し、2月末までに備品や回線を整えて仮オープン。その後、外装や隣接するコミュニティスペースの整備を行い、7月から正式な稼働が計画されている。
テレワークセンターは軒続きの3棟で構成される。企業がサテライトオフィス(本拠から離された場所に設置した小規模なオフィス)として活用する個室型、テレワーカー(テレワークを行うセンター登録者)が自由に活用するオープンスペース型、市民がテレワーカーと交流したり、テレワーカーの子どもたちが自由に遊べるコミュニティスペース型の3棟となる。
建物は原の辻遺跡、古代米や小麦を栽培する圃場が一望できる立地にあり、窓を大きく取って弥生時代の原風景を眺めながら仕事ができるように、都会から働きに来た人にも「癒し」が感じられる環境を整える。サテライトオフィスにはすでに、東京の壁紙メーカーが入居を予定している。
テレワークに使用するオープンスペースでは、仮オープン後の2月27、28日に主婦らを対象とした「実践編WEBライティングセミナー」を開講する。テレワークでWEBライターを目指すための基礎知識を学び、文章の書き方など2日間の実践練習を積む。
テレワーク希望者を対象に1月16日に実施された「女性の新しい働き方」講演会には、主婦ら約40人が参加し、その関心の高さが明らかになった。
講演会では、実際に福岡市で在宅ライターとして活躍中の柴田亜紀さん(38)が「妊娠して仕事を辞めて、出産後は無収入で、自由に使えるお金がなかった。だが在宅ライターの仕事は子育てしながらでも可能で、少しでも自分のお金が遣えることは大きな魅力。最初の仕事の振り込みは1600円だったが、感動した。まだキャリア4年だが、年々収入が増えて、いまでは多い月は十数万円になることもある」と語ると、参加者は目を輝かせた。
テレワークは在宅が基本だが、テレワークセンターでライターなどの先輩、仲間との交流が、情報収集、スキルアップ、仕事の幅を増やすためにも重要な役割を担う。柴田さんも「文章の書き方を先輩たちに教わったし、“ママさんライター・コミュニティ”ができたことで、大きな仕事を受注できるようになった」と話した。
本市のテレワークセンターは、単に仲間が集うだけでなく、西日本新聞社とクラウドソーシング(仕事を依頼したい企業と仕事を受けたい個人をオンライン上でマッチングするウェブサービス)の最大手ランサーズ株式会社が共同で運営する「九州お仕事モール」や、壱岐アプリ塾の卒業生で運営するビジョンプランニング株式会社などが、テレワーカーたちを積極的に支援することが決まっている。
白川博一市長は「テレワークは、すぐに大きな雇用確保につながるものではないかもしれないが、まずは主婦らが場所や時間にとらわれない柔軟な働き方で可処分所得を高め、壱岐での暮らしをより実りのある、豊かなものにしてもらいたい」と期待をかけた。