宇宙航空研究開発機構(JAXA)宇宙科学研究所と市教育委員会は22日、壱岐の島ホール大ホールで、本市で初開催となる「宇宙学校☆いき」を開校。小中学生とその保護者ら約250人が受講した。
1時限目は「地球のオーロラ、木星のオーロラ」をテーマに、同研究所で惑星分光観測衛星「ひさき」のプロジェクトマネージャーを務めている山﨑敦助教が、「木星のオーロラは地球のものとは比べ物にならないほど激しく大規模で、紫外線などの波長では百倍以上明るい」など「ひさき」の観測映像から地球と木星のオーロラの共通点と違いを講義した。
2時限目は「『あかつき』、金星をぐるっと激写!」をテーマに、金星探査機「あかつき」プロジェクトに携わっている佐藤毅彦教授が、「あかつき」に搭載した赤外線カメラによって南北方向に約1万㌔に及ぶ弓状の模様を発見し、その模様は金星大気中の東風(スーパーローテーション)の影響を受けずに同じ場所にとどまっていたという、1月17日付け英国科学雑誌「Nature Geoscience」に発表されたばかりの最新研究成果を伝えた。
この講義自体はともに20分間程度で、3時間に及ぶ授業の大半は、受講した児童の質問に2人の研究者が答える形で進められた。
各種イベントの質問コーナーなどでは恥ずかしがってなかなか手を挙げることが少ない壱岐の子どもたちだが、宇宙に関しては興味が尽きない様子で、会場内は挙手する子どもたちの元気な声であふれた。2人の研究者のレベルが高い講義についてさらに深く切り込む質問や、事前に学習してきた宇宙の神秘についての質問も多く出て、研究者が回答に言葉を窮する場面も。閉校時間になっても質問が終わらないほど、熱気に満ちた授業になった。受講者は帰りに「宇宙学校修了証」を受け取り笑顔を見せた。
佐藤教授は「さばき切れないほど質問があって、とても嬉しかった。きょう学んだことは、宇宙の真理の1%にも満たないこと。周囲には真理の大海原が広がっている。ぜひこの中から何人かでも、科学者を目指してもらいたい」と話した。
【会場での主な質問と回答】
「木星の衛星イオにはいくつの火山があるのか」
▽ぼく(山﨑)の知っているのは3個だが、まだあるかもしれない。イオは月と同じような大きさで、地球以外で初めて活火山が発見された天体。イオの火山から噴き出た物質が木星の磁場に捕らえられて、木星のオーロラの要因になっているのではないだろうか。
「木星はガスでできているのに、なぜ球体なのか」
▽木星は地球の11倍の大きさ(直径)だが、重さは3百倍、磁力は2万倍もある。中心に高密度の物質があり、中心に向かう重力でガスが集まって球体になっている。ガスの出て行く量と入って来る量のバランスが取れているので、大きさもほぼ変わらない。
「木星に水はあるのか」
▽まだ見つかっていないが、60個くらいある衛星の中のエウロパの表面は氷で覆われており、内部には水があるのでは、と言われている。また木星自体はアンモニアの雲で覆われているが、その下に水の雲が存在する可能性もある。
「ガスの木星の中に入ることはできないのか」
▽アンモニアの部分は1気圧程度だが、中に入っていくとものすごい圧力になる。1995年にガリレオ探査機がプローブ(大気圏突入観測機)を投入したが、地球の何百倍もの気圧で、すぐに交信が途絶えた。
「木星と同じように地面がない星は」
▽土星、天王星、海王星はガスでできている。太陽から遠い星は地面がないことが多い。
「土星のような輪のある星はあるのか」
▽木星にも薄い輪がある。天王星、海王星にもある。
「1月15日に打ち上げたミニロケットはなぜ失敗したのか」
▽いま原因を究明中なので、軽々しいことは言えないし、私(佐藤)には判らない。
「日本はなぜ有人ロケットを打ち上げないのか」
▽日本とアメリカでは考え方が違う面がある。アメリカは開拓者精神で、スペースシャトルやアポロの事故で犠牲者が出ても、計画を続けている。日本は一度でも事故があったら、絶対にやらない。安全性を最優先する。だが技術はあると思っているので、宇宙ステーション補給機「こうのとり」の打ち上げ成功で、気運が高まるかもしれない。
「『あかつき』が仕事を終えた後はどうなるのか」
▽金星は地球と同じくらいの大きさで、重力も80%くらいなので、大気から抜け出すことができない。仕事が終わった後は、大気の中に落ちていく。「はやぶさ」が戻って来られたのは、引っ張る力が小さな小惑星だったから。金星から戻ってくるようなロケットは当分、できそうにない。
「人間が住むことができる星はあるか」
▽いまのところ見つかっていない。火星は磁力がないので、空気を作っても流れてしまう。金星はしゃく熱で不可能。
「宇宙人はいると思うか」
▽どこの会場でも出る質問で、必ずいると答えている。何よりも地球人は宇宙人なのだから。生命体がいる星はあると思っているが、人間が通信するのは難しいだろう。太陽系に最も近いケンタウルズ座でも4・3光年も離れているので、電話で話してもひと言が届くのに4・3年掛かってしまう。