13日に開かれた市議会定例会5月会議で、芦辺中学校建設予定地の市ふれあい広場駐車場周辺に、国が土砂災害防止法で定める土砂災害警戒区域(イエローゾーン)、同特別警戒区域(レッドゾーン)が含まれていることが議題に上がり、市議会は市教育委員会に対して住民への説明会開催を要請した。市教委は6月3日に市民説明会を開催する方針を示したが、同地を建設第一候補地として市教委に報告したのは地元代表で構成する検討委員会であり、市教委は相反する意見への対応に苦慮している。
芦辺中建設問題は、5月議会に上程された議案審議後に、音嶋正吾議員が「3月議会で可決した新年度一般会計当初予算のうちの一部、芦辺中建設工事設計に係る予算執行の一時凍結を提案する」との動議を出し、呼子好議員が賛成したことで、鵜瀬和博議長は議題として追加日程に組み込んだ。
音嶋議員は「建設場所について市長は、市教委の意見を尊重すると言ったが、土砂災害の危険がある区域に建設することが望ましいことなのか。警戒区域、特別警戒区域に指定されたのは昨年3月で、当初と大きく状況が変わったのだから、それを住民に知らせて、再度意見を聞くべきだ」と提案した。
県が公開している土砂災害警戒区域等マップによると、同中校舎建設予定地のふれあい広場駐車場のうち、西・南側の約30%程度にイエローゾーンが、左奥の角(南西側)にレッドゾーンに含まれている(図、写真)。
久保田良和教育長は「イエローゾーンは建物建設に対して何も制限はない。レッドゾーンは開発工事にあたって土砂災害を防ぐ対策工事が必要であり、建築物の新築・増築には土砂災害の衝撃力に対して安全となる構造が義務付けられているということ。県も申請があれば、許可は可能だとしている。“絶対に”安全ということは世の中にないので、絶対とは言えないが、かなりの高い確率で安全を確保できる」と答弁した。
鵜瀬議長は動議に対して議会運営委員会(小金丸益明委員長)を招集し、協議。「すでに可決した予算の執行一時凍結は不可能であり、動議を採決して可決しても効力がない。採決は行わず、教育委員会に対して説明会を早急に行うように要請する」と議決は行わずに議長判断での要請を行った。
閉会後に久保田教育長は「6月3日に芦辺町で説明会を行う予定」と明言した。
だが市教委の立場は微妙だ。平成21年、旧芦辺町3中学が統合する際に「芦辺中学校統廃合に関する協議会」は「建て替える時の校舎の位置は、旧3校地区のほぼ中央としてふれあい広場周辺とする」と決議文が出された。また耐震補強設計が認められず新改築が余儀なくされたことで、6つの小学校区の保護者・地域の代表15人で構成した「芦辺中学校校舎建設に関する検討委員会」は、26年1月に「第一候補地をふれあい広場とする」報告書を市教委に提出した経緯がある。
ふれあい広場は保護者と地元住民の意見で決まった候補地であり、その後に地元から「報告を撤回する」などの意見も出されていない状況では、市教委として建設方針を変更することもできない。久保田教育長は「児童の安全確保のためすでに決まった建設スケジュールを早急に進めていくことが重要で、説明会では土砂災害に対しての対策を説明する予定だが、地元の総意として建設予定地を撤回するというのなら、再検討が必要になるかもしれない」と困惑の表情を浮かべた。