12日に起きたジェットフォイルの事故は、航路を日常的に利用している壱岐市民にとってより震撼とさせられる出来事だった。荒波の中で漂流し、乗客は救命胴衣を着用したというが、この波高と水温を考えると、もし転覆していたらどれだけの大惨事になっていたのか、考えれば考えるほど恐ろしくなる。
エンジンが衝撃を受けて自動停止したこと自体は安全機能が正常に作動したのだろうが、復旧までに2時間を要したのは大きな問題で、詳しい原因などは今後、明らかにされるはずだが、波浪警報は発令されていなくてもこの気象条件の中で運航したことに問題がなかったのかなども、徹底的に検証してもらいたい。
今回の事故と直接関係があるかどうかは不明だが、ヴィーナス2は1985年建造で、すでに38年が経過している。ヴィーナスは1991年でやや新しいが、それでも建造から32年が経過している。
1989年以降製造している川崎重工は「船体はアルミ合金で腐食に極めて強いうえ、エンジンは一定期間ごとにオーバーホールして常に新品と同じ性能を発揮するため、船齢が高くなっても性能や経済性が落ちることはない」とホームページで説明しているが、ヴィーナス2の建造はボーイング社だ。
ボーイング社製のジェットフォイルは1978年までに製造された10隻はすでに廃船か定期運航中止となっている。79年以降製造の船は定期運航しているものが多いが、81年建造の東海汽船の2隻などはすでに退役している。日本旅客船協会は「ジェットフォイルの寿命は長いが、船体や水中翼は25~35年が寿命の目安」との見解を示している。
壱岐市は毎年、県知事要望の中で「新船の建造に対する国の財政的支援について、国への要望等継続を要望」しているが具体的な動きが見られない。利用者の安全は何よりも最優先されるべきことで、空港滑走路延長よりも緊急性の高い問題であるはずだ。九州郵船もぜひ重い腰を上げてもらたい。