市、壱岐振興局、ハローワーク壱岐が市商工会に対して、高卒求人確保の協力依頼を行った。昨年に続いての要請で、地域活性化のためには1人でも多くの高校生に島内で就職してもらう必要がある、との理由からだ。
29年度の島内高卒求人者数は70人だったが、島内に就職した高卒者は23人に留まった。求人は増えても、島内で就職する高卒者は毎年ほぼ横ばい。高校への求人票提出は7月1日からで、就職希望の生徒の多くは7月中に応募企業を決定するため、7月1日に求人票をすぐ提出するように要請した。
確かに高校卒業生が島外に就職・進学すれば、本市の人口は減少する。地方にとっては人口減少が最大の課題だけに、市などが引き留める気持ちはよく判る。だが壱岐の若者にとって、一度も島外で生活しないまま一生を過ごすことが、果たして良いことだろうか。どのような仕事であっても成功するためには、できるだけ幅広く、多くの経験を積むこと、あらゆる分野に人脈を広げることなどが重要視されている。経験が少なく交友関係が狭いと、新しい発想が生まれにくい。生まれ育った場所とは違う場所で生活することは、毎日が刺激になるものだ。
「常識」の幅も広がる。例えば、壱岐に来た人が驚くことの一つが車の運転だ。ウインカーを点けずに曲がる、暗くてもライトを点けない、ハザードを点けずに停車する、などが見られる。おそらく、壱岐以外での運転経験が少ない人ではないだろうか。都会でそのような運転をしたら事故に遭う可能性が高いが、壱岐ならば危険が少ないため、自己中心の運転になりがちだ。
若者が「都会に出てみたい」と思うことは当然の欲求だし、若い時の都会での経験を、将来地元に戻って活かしてもらう方が、地方の発展に結びつくようにも思える。もちろん人によって様々な事情があり、ずっと地元に残り続けることが悪いことではないが、行政などが強く引き留めることだけが地方活性化とは思えない。