市消防本部は「救急の日」の9日、救助活動に協力した勝本町の齊藤工務店代表、齊藤豊さん(73)に感謝状を贈呈した。
8月6日午後7時10分頃、同町本宮東触の農道を70代の男性が運転するトラクターが運転操作を誤り、2㍍下の用水路に転落する事故が起きた。男性はトラクターの下敷きになり、意識はあるものの、あばら骨2本を折った上、腕と脚が挟まり動けなくなった。通報を受けた救急隊員が駆け付け、機材を使って車体を持ち上げ挟まった脚を抜くことができた。壱岐病院の医師も駆け付け点滴処置が行われる中、腕を抜くには機材の設定を変更するため時間がかかる状況だった。
現場に居合わせたJA壱岐市畜産部の職員、都野川秀(しげし)さんが知人の福田建設社長の福田恵さんに連絡。福田さんは都合で運転ができなかったため、齊藤さんに電話でクレーンを要請した。
「おおごとがおきとる」。そう電話を受けた齊藤さんは自宅倉庫にあるクレーンで現場に駆け付け、トラクターを持ち上げ、腕を抜くことに成功した。クレーンの操縦席から男性は見えない位置だったが、現場の隊員の誘導を受け操作。クレーン操作歴20年以上の経験が迅速な救助の成功に導いた。救助された時には思わず拍手したという齊藤さん。「やったかいがありました」と振り返った。
山川康消防長は「深く感謝します。まさに市民、消防、医療が連携した活動だった。今後とも協力をお願いします」と述べた。
同消防本部によると、腕や脚を2時間以上圧迫した後、解放すると、筋肉細胞の障害に伴う毒素が全身に広がり、死に至る「クラッシュシンドローム」が起こる懸念があったが、齊藤さんの迅速な活動により防ぐことができた。男性は入院はしたものの、現在は退院している。