対馬海峡に停滞する梅雨前線に暖かく湿った空気が流れ込んだ影響で、6月29日から30日にかけて大気の状態が非常に不安定になり、本市では「50年に1度の記録的大雨」(長崎地方気象台発表)となった。
同気象台によると、芦辺測候所の観測で30日午前6時20分までの24時間総雨量が、昭和52年の観測開始以来史上最多の432・5㍉を記録。これは平年の6月1か月分の1・6倍にあたる。
同気象台は29日午後10時03分に大雨洪水警報を発令。午後11時40分まで1時間雨量が118・5㍉を記録したため、「記録的短時間大雨情報」「土砂災害警戒情報」も発表した。
これを受け壱岐市は午後11時45分、市内全域の全1万1656世帯、2万7367人に避難勧告を発令し、市内10か所の避難所を開設した。本市での避難勧告発令は昨年7月12~13日に勝本町全域と郷ノ浦町沼津地区の2869世帯6652人に出されたのに続き2度目。市内全域は04年の市政施行以来、初めてとなった。
避難所のうち5か所に、一時19世帯54人が自主避難したが、30日午後5時までには、家が危険な状況にある1世帯3人以外は帰宅した。
市危機管理課が確認した市内での主な被害は、土砂崩れ19件、落石1件、床下浸水9件、ガードレール崩壊1件、道路冠水8件、勝本町の一部で約2時間の停電など。その他、河川災害4件、林地災害100件、農地災害300件、砂防ダム被害1件、船舶被害1件などがあったが、人的被害はなかった。
土砂崩れにより勝本町新城西触の金蔵寺本堂が全壊した。市内数か所で土砂崩れによる道路通行止めが発生したが、勝本町立石西触の1か所以外の主要道路は、30日午後までに開通した。
また市に届け出がない床上浸水も、勝本町の商店、飲食店などで起き、従業員らは店内の掃除に追われた。
避難勧告は30日午前9時30分、洪水警報は同6時51分、大雨警報は同10時54分に解除された。
白川博一市長は「大変な災害となったが、けが人などがいなかったのは不幸中の幸いだった。復旧に全力で取り組む。壱岐は災害に強い島だが、豪雨が深夜だったこと、潮位が低い時期だったこと、風がそれほど吹かなかったことが、50年に1度の大雨でも被害が拡大しなかった要因ではないか。今後も災害対策に万全を尽くす」と話した。