市内でタイワンリスによる被害が拡大している。市によると、2002年から18年までに約12万匹が捕獲され、昨年は過去最も多い1万6300匹の捕獲で、生息数も増加の一途を辿っていることが予想される厳しい状況だという。市ケーブルテレビでは過去5年間に約180件のリスによる光ケーブル切断事故が発生し、今月は3件が立て続けに起こった。市は7月からは新たな対策で、タイワンリス根絶へ向けて本格的に乗り出す。19、20日に開かれた市議会定例会6月会議の一般質問で、久保田恒憲議員の質問に谷口実農林水産部長が答えた。
市内で急増しているタイワンリスは、1992年から2001年まで勝本町片山触にあった民間レジャー施設「壱岐リス村」から逃げ出したものだと言われているが、市は「特定できていない」としている。市ケーブルテレビでは今月に入り、14、16、23日と立て続けに、岳の辻付近で光ケーブルが切断されて、福岡波のテレビ番組が映らなくなる放送障害が起きた。壱岐ビジョンによると、過去5年間の被害総額は、伐採などの対策費を含めて約2500万円と算出している。
農林業に対しての被害は農業共済保険の対象になっていないため、被害額は明らかになっていないが、久保田議員は「農水省ホームページには壱岐でのタイワンリス被害の調査結果として、電話線・アンテナケーブルの切断のほか、果樹やスギ・ヒノキの幼木への被害が掲載されている」と指摘した。市によると、市民にワナを貸し出して捕獲を開始した2002年から08年までに2万9750匹、09~13年に3万3264匹、14~18年に5万7426匹が捕獲されており、17年間のトータルで捕獲数は12万440匹。1年間平均は7085匹だが、この5年間平均は1万1485匹で、昨年は1万6300匹と最も多くなっている。
これまで壱岐地域鳥獣被害防止対策協議会は対策として、市民にワナを貸し出し、捕獲したリス1匹に700円の報奨金を支払っていたが、予算の関係で貸し出すワナが不足してきたため、市は今年7月からワナを買い取り制(小型千円、大型2千円)にする一方、捕獲したリスを持ち込む旧JA那賀支所に担当者を配置し、捕獲場所などの聞き取りを行い、生育数・生育分布を綿密に把握することにした。毎年5月下旬に行っている有害鳥獣捕獲慰霊祭にはリス捕獲者も呼び、情報交換、ネットワーク形成も行う。市民から「どのように捕獲したら良いのか判らない」との声が多いことから、熊本県の森林動物総合研究所九州支所の安田雅俊グループ長を招へいして、市民に捕獲技術講習会を実施する計画も立てており、市民の意識醸成、捕獲技術向上を図る。
久保田議員は「このままでは壱岐の文化遺産にまで被害が及ぶ可能性がある。報奨金支払いには、リスを殺処分してから持ち込まねばならず、一般市民にはハードルが高い。生きたまま持ち込むことはできないのか。熊本県宇土市はほぼ根絶に成功している。手法を参考にするべき。逆に、リスの島として観光資源にしてはどうか」などと提案した。谷口部長は「タイワンリスは特定外来生物に認定されているため市民も駆除はできるが、餌付けや飼育はできない。まずは実態を把握することが重要だ。生きたままの持ち込みは、担当者が対応しきれず難しい。他地域の情報も仕入れて、山奥など人が立ち入らない場所での捕獲などの対策を考えている。ワナの販売方法、持ち込み方法(月・水・金曜と第3日曜の午前9~11時)、講習会開催などは、今後市民に周知していく」と今後の方針を示した。