市は、壱岐の玄関口である郷ノ浦港の再整備に本格的に取り組む考えを示した。11日の市議会定例会9月会議一般質問初日に、赤木貴尚議員の質問に答えた。懸案だったジェットフォイル乗降用浮桟橋の設置工事を2021年度から着工する計画を県に要望するにあたって、工事用地にある33台分の駐車スペースが使用不能となることから、白川博一市長は写真パネルで浮桟橋設置用地を説明しながら「浮桟橋設置の前に駐車場確保が緊急的な課題となる。立体駐車場整備が待ったなしの状況だ」と郷ノ浦港フェリーターミナル周辺に立体駐車場を建設する考えを表明した。実現すれば、慢性的な駐車場不足だった郷ノ浦港への市民らの不満が解消されることになるが、議員からは建設に不安を抱く声も出ている。
郷ノ浦港のジェットフォイル用浮桟橋の設置は、乗降口が天候や潮の干満差により変動すること、タラップの傾斜や動揺があり、高齢者、妊婦、身体障害者、車椅子利用者、キャリーバックを持った旅行者らが不安、不便を感じていることから、これまで何度も市議会一般質問で取り上げられてきた。昨年11月には市老人クラブ連合会・市身体障害者福祉協会・市観光連盟が「バリアフリー化できる浮桟橋の設置を早急に実施して欲しい」と白川市長に要望書を提出。港湾整備・管理は県管轄であるため、市も県、壱岐振興局に要望し、協議を進めていた。
県も必要性を認識していたことから、今年度は設置場所を現ジェットフォイル乗降口付近の岸壁に組み込む工事を行うことで前向きに協議が進んでいたが「九州郵船から、現在の乗降口付近はフェリーを係留するためのロープをつなぐ繋船栓があるため、掘り込む工事は難しいとの申し入れがあった」(谷口実農林水産部長)ため、現フェリー係留場所よりも手前の旧フェリー岸壁沖に設置する方向に転換した。
だがこの旧フェリー岸壁には33台分の駐車スペースがあり、浮桟橋設置工事の工事車両、設置後は緊急車両の駐車・通路の確保が必要なため、このスペースの一般駐車が制限される。昨年8月に元居トンネル横に40台分の駐車場を整備したが、郷ノ浦港は盆、正月休みや週末の駐車場不足が深刻な状況に変わりがなく、33台分が駐車不能となればさらに利便性が悪化する。そのため白川市長は「迂回路(現在のフェリーターミナル前駐車場)付近に立体駐車場を建設することが急務で、県と協議する」と、これまでの「新たな駐車場建設は難しい」との考えから方針を転換した。
22年から浮桟橋設置工事に入るためには21年度中に立体駐車場を建設する必要があり、今後は計画が急速に進むことになるが、問題も多くある。現駐車場スペースに立体駐車場を建設するとなると、その工事期間中の駐車場不足はさらに深刻になる恐れがある。景観、費用を考えると2~3階建てが現実的だが、それでは完成後も現在の駐車台数からそれほど増加することができない。建設費用や管理費用捻出のため駐車料金有料化も考えられるが、そうなると他の駐車場や芦辺、石田港と不公平になってしまう。またターミナルからジェットフォイル乗降口まで距離が延長されるため、風雨除け通路の設置、乗客の誘導なども必要になり、経費、手間が増大する心配もある。
複数の議員から「バリアフリー、観光客の利便性を考えれば浮桟橋は必要だし、駐車場拡張も重要だが、県事業以外にも膨大な経費がかかるのでは」「間近に迫っているジェットフォイルの更新(1985、91年建造で耐用年数は25~35年程度)が決まってから着手した方が良いのでは」「浮桟橋、立体駐車場と単発の事業ではなく、郷ノ浦港一帯の総合整備計画を立てていくべき」「芦辺港浮桟橋の移転計画もあり、フェリー、ジェットフォイル発着場所の総合的な見直しもしていくべきではないか」など計画を不安視する意見も出ている。