一支国博物館に続いて壱岐市ケーブルテレビ施設の指定管理者も変更されることがこのほど、明らかになった。同施設の指定管理は平成22年の開設以来、関西ブロードバンド株式会社(三須久社長、本社・兵庫県神戸市)が2期にわたって管理運営を行ってきたが、複数者によるプロポーザルの結果、7月27日に開かれた指定管理者選定委員会で光ネットワーク株式会社(陶山和浩社長、熊本県阿蘇郡高森町)が当選し、関西ブロードバンドは落選。応募者に8月末、通知された。同社を指定する議案は、一支国博物館の指定管理者に当選した株式会社パブリックビジネスジャパン(萩原宣社長、本社・熊本県熊本市)を指定する議案とともに、市議会定例会9月会議に上程される。
壱岐市ケーブルテレビ事業は、市内の3分の1相当(約1400世帯)が難視聴地域だったことから、23年7月24日のアナログ放送完全停波を見据え、総額約46億2800万円をかけた。難視聴地域解消、インターネット環境の整備を目的として施設条例が制定され、22年7月に公募型プロポーザル方式で関西ブロードバンドが指定管理者に決定した。同社は市内に株式会社壱岐ビジョンを設立。加入者増加に取り組み、現在はテレビ8780世帯、インターネット4164世帯(30メガ3402、100メガ一般670、100メガ企業91、1ギガ1)、IP電話3066世帯と契約している。当初は不満の多かった自主制作テレビ番組内容も、年に4回開催される番組審議委員会の意見を聴取して改革に取り組み、人気番組「今日もキバッチ」を生放送にするなど、市民からも支持されるようになってきていた。またインターネット回線速度も通信施設整備により近年は改善されてきた。それだけに関西ブロードバンド、壱岐ビジョンでは「寝耳に水の話」と落選通知に動揺が広がっている。一支国博物館の現地採用職員同様に、壱岐ビジョン職員の雇用継続は保証されておらず、今後の引き継ぎ作業の中で話し合われていくことになる。
光ネットワークは熊本県高森町と南小国町でテレビ放送、光ブロードバンドサービスなどを行っているが、高森町は人口約6千人(サービスエリアはその一部地域)、南小国町は同約3800人と壱岐市よりもかなり小規模。自主制作しているテレビ番組は町議会生放送、選挙開票速報以外は、町からのお知らせや文字放送による行政情報などに限られている。実績面では関西ブロードバンドに見劣るように見えるが、壱岐市での事業は同社に出資する株式会社九電工(本社・福岡市)とコンソーシアム(共同事業体)を組んで実施する計画が立てられている。
同社は壱岐市での事業について「上下最大1ギガヘルツの超高速光ブロードバンドを活用してインターネット高速化を図り、1ギガサービスを低価格で導入する。テレビ番組は内容を一新して、いまよりも判りやすい番組づくりを行い、壱岐市観光情報などをネット配信していく」と話した。市政策企画課によると1ギガサービスの導入は現在の機器でも可能だという。だがインターネット回線が変更されることに伴い、各家庭のルーターやパソコンは設定変更が余儀なくされる。またプロバイダー変更により新たなメールアドレス、パスワードが配布され、現在のメールアドレスを使用し続けるには壱岐ビジョンのプロバイダーとしてのサービス継続も必要になる。
市企画振興部の本田政明部長は「市民に影響が出ないように移行する」と話したが、これらのスムーズな移行、テレビ番組の大幅改編、壱岐ビジョン従業員の継続雇用などが混乱を招かずに実現できるのか、今後の取り組みが注目される。
また一支国博物館の指定管理者として当選したパブリックビジネスジャパンは、熊本県内の公共施設を中心に多くの指定管理を行っており、「指定管理者の専門企業」と自称している。だがその多くは文化会館、図書館、コミュニティ施設などで、博物館運営の実績はない。本田部長は「博物館運営に詳しい業者と連携していく計画」と説明したが、現時点でその業者名は明らかにされておらず、一支国博物館をどのように改革していくのか、未知数な部分は多い。