第59回外国人による日本語弁論大会(国際教育振興会、国際交流基金、壱岐市主催)が5月26日、全国の離島で初めての開催として、壱岐の島ホールで開かれた。27か国・地域、105人の応募から予選審査を通過した11か国12人が出場し、日本での生活などについて6分間のスピーチを行った。本市在住のガルブザ・ハルカ・バハドゥルさん(26、こころ医療福祉専門学校壱岐校2年=ネパール)、レイチェル・エリザベス・ブレインさん(26、石田中学校外国語指導助手=アメリカ)も出場し、会場には2人を応援する仲間や教え子ら約700人が詰めかけた。また国際教育振興会互助会の名誉会長の高円宮久子妃殿下がご来場された。
6番目のスピーチとなったガルブザさんは「ちいさなことばで人を幸せに」のテーマで、アルバイト先のコンビニや学校の施設学習で出会った「小さな言葉」への感動の気持ちを話した。「コンビニでは、名前を覚えてもらったり、“息子みたいだ”と言ってもらったこともある。施設学習では実習最後の日に“ガルちゃんの笑顔が私の元気の薬”と言ってもらったことを、私は忘れない」と慣れない異国での生活が市民からの小さな言葉に支えられていることに感謝した。その上で「お金がなくても、小さな言葉で人は幸せになれる。私も小さな言葉で周りを幸せにし、元気を与えるような介護福祉士になりたい」とあと1年間、学校でしっかりと勉強し、介護福祉士の資格を取得して社会に貢献する目標を語った。
10番目の発表となったレイチェルさんは「人生には意味がある」の演題で、これまでの人生とこれからの目標についてスピーチした。4歳からバイオリンを習い、オーケストラ奏者になることを目指していたが、小学校卒業前に交通事故に遭い、手に障害が残って夢をあきらめた。「私の人生は終わったと思った。でも高校で日本語教室に通い、日本に住んで働きたいという新たな夢ができた。そして日本で働けることになったが、その場所がドラッグストアくらいしかない壱岐市という場所で、長崎から見たこともない小さな飛行機に乗った時にはショックと不安でいっぱいになった」と壱岐に来るまでを振り返った。「でも実際に住んでみると、きれいな海に囲まれていて、みんなが私のことを受け入れて応援してくれた。新しい価値観をプレゼントしてくれた。この素晴らしい壱岐で4年間を過ごせて嬉しいし、この小さな島が私の故郷になった。人生は思っていた通りにいかないこともあるが、それにもまた意味がある。神様は素敵な準備をしてくれている」とアクシデントがあっても希望を失わないことの重要さを語った。
会場にはレイチェルさんから英語を習っている4中学137人の生徒らが応援に駆けつけ、レイチェルさんの涙ながらのスピーチに大きな拍手が起こった。来場者が一番良かったと思うスピーチを選ぶ「会場審査員賞」はレイチェルさんが受賞した。その他の表彰は、最高賞の外務大臣賞は「船は風に流される」のハラ・ハティーブさん(29、明生情報ビジネス専門学校生=シリア)、文部科学大臣賞は「完璧な私って無理?」のカテリーナ・ノヴィツカさん(22、慶應義塾大学生=ウクライナ)、主催団体賞は「茶道‐幸福の訓練」のヤン・ヘンドリク・グリガドさん(23、東京大学生=ドイツ)がそれぞれ受賞した。
白川博一市長は「皆さんのスピーチに感動した。日本、日本人への熱い思いが伝わってきた。ずっと日本に住んでいると気づかなかったこと、反省することも多数あった。壱岐市にも14か国約100人の外国人が住んでいて、この大会にも市内から2人が出場したことはとても誇らしかった。これからも多文化共生のまちづくりを推進していく」と挨拶した。弁論大会の模様は6月23日午後3時から4時まで、NHKEテレで放送を予定している。