市議会定例会3月会議は3日開会し、総額225億2300万円の新年度一般会計当初予算案など32件を上程した。4月施行の国境離島新法に係る事業費として約4億9700万円、小学校就学から中学校卒業まで子どもの医療費給付を拡充する福祉医療費に7464万円を計上するなど、本年度当初比約3億3800万円(1・5%)増となった。また本年度一般会計補正予算には総額約1億3100万円を計上した。
国境離島振興費は約4億9700万円のうち、約3億1800万円が国、県の支出金で、一般財源は約1億8千万円。航路航空路運賃低廉化の事業費は市予算として約8337万円を計上した。
航路の島民割引について、1日に国が4月1日購入分からの航路ごとの運賃を発表したことを、白川市長が施政方針で報告した。
博多~壱岐のフェリー往復は従来の島民割引運賃3370円から780円割引の2590円、同ジェットフォイルは6870円から1620円割引の5250円、印通寺~唐津フェリーは3230円から1540円割引の1690円に決定した。
また市営三島フェリーの片道運賃は大島・長島・原島~郷ノ浦が430円から220円割引の210円となる。
白川市長は「博多~壱岐は平均約3割程度、三島航路は平均約5割程度の引き下げとなる。市民の経済的負担を軽減し、安心して住み続けてもらえる環境づくりに取り組んでいく」と述べた。
証明書類提示 新・島民割引
割引運賃の対象者は国境離島地域に居住し、住民登録を行っている人に限られるが、定期的に帰島している壱岐出身者などの「準島民」に対しての割引は、国の方針が決定してから発表される。
また島民割引を利用する際には「国境離島島民割引カード」の提示が必要になるが、発行が4月の施行に間に合わないため、来年3月31日までは運転免許証、健康保険証、島民航空カードなどの公的機関が証明する書類の提示で購入できる。従来のように離島からの往復ならば自動的に割引が適用される方式とは異なるため、注意が必要だ。
航空路運賃の割引料金は、現在国が協議中で、近く発表となる。
雇用創出に約1・7億円
離島輸送コスト支援事業は農林(農産品の移出、肥料・飼料などの移入)が約1億617万円、水産(水産品の移出、エサなどの移入)が6020万円。観光客がもう1泊するための旅行商品開発や観光サービスの担い手育成などを支援する滞在型観光促進の2事業は、計約6934万円を計上した。
国境離島新法の主軸となる雇用創出のための創業・事業拡大支援事業は1億6860万円。事業費はこの金額に事業者負担の4分の1が加わるため、総額は約2億2480万円となる。創業の上限(600万円)と事業拡大の上限(1600万円)が同数採択されると仮定すると、各10件ずつ程度の採択を想定した予算案となった。
中学校卒業まで福祉医療拡大
国境離島新法関連以外で予算案の目玉となるのが、福祉医療の拡充。これまで本市の医療費は、3歳未満は無料、3歳以上~小学校入学前までは月1回800円まで、2回以上1600円の一部自己負担だったが、この一部自己負担を中学校卒業までに拡充する。小学生以上で自己負担分を超えた医療費は、後日、償還される。16年度からの予算増額は約3千万円。
県内21市町では、松浦市が18歳に達する年度末まで、佐世保市など13市町が中学校卒業まで、ほぼ同額の一部自己負担で支給が行われており、小学校入学前までしか支給がないのは本市だけだった。 白川市長は昨年の市長選の公約に「中学校までの医療費無料化」を掲げており、完全無料化には至らないものの、まずは県内他市町と肩を並べるレベルを目指す。
芦辺中学校 新築の方針
旧那賀中学校への移転が決まった芦辺中学校に関して、白川市長は「旧那賀中学校の再度のコンクリート強度検査の結果、1か所が国の基準を下回るものの、耐震補強は可能であるとの調査結果が提出された」と報告。一方で「だが何とか耐震改修ができるという状況であり、耐用年数や不足する教室の増築など総合的に勘案した結果、新築することがより懸命と判断した」と校舎新築に係る調査設計・用地・補償費を計上した。
島外利用者の短期滞在住宅
本年度一般会計補正予算案では、2月にプレオープンしたテレワーク施設を島外者が活用しやすくするための短期滞在型住宅整備などに6千万円を計上した。
テレワークは全国的に増加傾向にあるため、差別化を図り、施設の独自性についてターゲットに合わせた戦略的情報発信を行うために、モニターツアーの実施やテレワーク近くに島外利用者向けのシェアハウスなどを建設する。
白川市長は「テレワークに多様な人々が交われるコミュニティスペースも併せて整備することで、市民も移住者も地方創生に積極的に参画できる仕組みを構築したい」と同施設を定住・交流人口拡大に結び付け、本市を産官民一体となったテレワークのモデル地区にしたい考えを示した。