市民にとって国境離島新法各種施策の中で本丸だった、航路運賃低廉化の具体的な料金が発表された。
九州郵船フェリー、ジェットフォイルの平均約3割程度の引き下げは、島民にとって大きな恩恵となる。「運賃が安くなると島外へ買い物に行き、島内での消費が鈍るのではないか」という心配の声もあるが、島内で販売しているものを、多少の価格の違いはあっても、わざわざ島外で購入する人はそれほど多くはないだろう。
いまは送料無料のネット通販が大幅に拡大しており、むしろ対策が必要なのはそちらの方だろう。ネット通販と棲み分けをするためには、アフターケアなど地元ならではのサービスの充実を図るなど、国境離島新法の事業拡大支援策なども活かして、対抗していくしか手はない。
運賃低廉化を豊かな市民生活、そして壱岐島の再生にどう活かしていくかは、市民の知恵と行動力にかかっている。島外に多く出ることで人脈形成、情報収集、技術取得など幅広い交流を行うことは、必ず地域活性化に役立つ。市、県が先導役を果たすことも必要だが、市民が自ら動かなければ、せっかくの施策も十分に活かし切ることはできない。
航路運賃は市民の大きな関心事だっただけに、今回の発表の仕方にはやや疑問も残った。市ホームページに掲載された文書は、国から配布されたものをそのまま転載しただけだったからだ。ミックス、リプレイス、身障者、通院、学生、団体などこれまであった各種割引制度の取り扱い方や、ジェットフォイル往復割引の制限日数などは、九州郵船に問い合わせないと詳細が判らない。これでは市民に対して不親切だ。
運賃低廉化に関しては市総務部の担当だが、新法の各種施策は担当部署がそれぞれ違う。担当部でも「国が決めることだから」「県の意向もある」などとはっきりと答えが得られないことも多い。新法を市民が有効に活用するためには、総合的に取り仕切る市の担当部署新設も必要ではないだろうか。