壱岐市から県に対しての要望活動が15日、県庁本館特別応接室で行われ、市からは白川博一市長、町田正一市議会議長、山本啓介県議、久保田良和教育長、各部長らが、県からは中村法道知事、関係部長らが出席した。白川市長は市民病院の県病院企業団への早期加入、漁業燃油高騰対策、小学校複式学級編成基準の引き下げの3項目について知事へ要望した。またクロマグロの産卵期における漁獲制限などについての8項目も含まれた要望書を中村知事に手渡した。
白川市長は自ら選挙公約で「一丁目一番地」と掲げた県病院企業団への加入について「県の支援で向原総病院長が赴任するなどして、市民病院は昨年度から医療職給与の見直し、かたばる病院との機能統合、診療体制の充実、収支構造の改善など、経営の安定化の取り組みを進めてきた。将来にわたり離島地域住民の医療機能を維持し、中核病院としての責務を果たすためにも、県病院企業団への早期加入に特段の配慮を賜りたい」と要望した。
これに対して中村知事は「加入には構成団体の同意を得て、スムーズな移行が必要。“一回り”ぐらいは実績を見せてもらう必要があるのではないか。収支構造について、いま少し経緯を見極めた上で、各構成団体、企業団と協議してもらいたい」と現時点では時期尚早であるとの認識を示した。この「ひと回り」について白川市長は「25年度の実績と理解していいのか」と問い質したが、中村知事は「私が決めることではないが、課題について関係者間の協議で了解を得る必要がある」と時期については明言しなかった。
漁業燃油高騰対策については、白川市長が「国のセーフティネット事業は積立金の負担が厳しい。燃油の年間使用量が少ない漁業者にとってはメリットが少なく、壱岐市での加入率は52%、県全体では10・8%に留まっている。そのため市では独自に補てん策を講じている。国に対してセーフティネット発動基準の引き下げ、発動基準の平均価格を平成16年度3月以前とする見直しを、県からも働きかけて頂きたい。また県、市、漁業関係者が一体となった補てん策の早急な構築を要望する」と求めた。
中村知事は「国も補正予算で対応しようとしているので、まずはその動きを見極めて県としての対応を検討したい。基準を平成16年の価格に戻すことは、確かにそうだと思うが、国として財政負担が増えるので財務省がどう判断するか。燃油価格の高騰は先が見えていない。いま10円を補てんしても、来年は20円、再来年は30円となったら、とても追いつかない危機感がある」。「農業なら燃油のかかるハウスミカン栽培を止めるという方法がある。漁業は漁法を変えるのは難しいかもしれないが、省エネでどうやって生き残るのも考える必要があるのではないか」と燃料使用量を削減する漁法への切り替えを提案した。
久保田教育長からは小学校の複式学級編成基準引き下げ、特に第6学年を含む複式学級の編成基準については県単独の措置を図ること、複式学級を有する学校への複式学級支援非常勤講師などの配置の拡充を図ることが要望されたが、中村知事は「県単独の配置は財政負担が難しい。新しい加配制度を国に要望している」と地域の実情を踏まえた非常勤講師の配置などの措置は行っていくものの、県単独での基準引き下げは難しいとの考えを示した。
要望についてはいずれも明確な回答は得られなかったものの、会議後は、県庁出身の山下三郎副市長が橋渡し役となり、市出席者と県関係部長らとの間で話し合いが行われるなど、ロビー活動で壱岐の現状について訴える有意義な機会となった。
【その他の要望】▼改正離島振興法に係る予算確保等の支援▼唐津~壱岐(印通寺)航路「フェリーあずさ」のリプレイス事業の早期実施▼嫦娥三島大橋、原島大橋(郷ノ浦~大島~原島)架橋の早期実現▼道路整備について(県道渡良浦初瀬線=初山側)▼河川整備等(二級河川の管理用通路の整備・河川敷の草木の伐採)▼住環境の整備に対する支援(住宅性能向上リフォーム支援事業の継続、配分枠の拡大)▼クロマグロの産卵期における漁獲制限(国、関係機関への働きかけ)▼勝本港に関連する施設整備等(大型輸送船、大型船舶等が接岸できる岸壁の整備と周辺施設整備、壱岐島東・西・南部方面からの避難用幹線道路の整備)