県は10月31日、国の新たな知見を踏まえ、平成26年に策定した「長崎県津波浸水想定図」と「津波浸水想定について(解説)」の第1版を見直し、同第2版を作成、公表した。本県における最大クラスの津波が悪条件下で発生した場合に想定される浸水の区域、水深を示したもので、今回追加して選定した津波断層モデル「西山断層及び北方延長部の断層(F60)大すべり左側」が活動した場合、壱岐市の影響開始時間は19分、最大津波到達時間は37分、最高津波水位は7㍍を想定した。
県津波浸水想定図第2版で本市全域の浸水地域は4枚の地図で示されており、最高津波水位(海岸線における海面水位の標高)が5~10㍍の「赤色」で塗られた部分は、勝本町天ケ原海水浴場周辺からコーゴ岬にかけての海岸線の一部に示されている。
天ケ原海水浴場付近やイルカパークへ向かう市道では6・5㍍程度の浸水深も想定されており、民家は少ないものの、観光シーズンなどは海水浴客の避難誘導、イルカパークからの避難経路の確保などがより重要になってくる。
壱岐市の浸水面積は、1㌢以上30㌢未満40㌶、30㌢以上1㍍未満70㌶、1㍍以上2㍍未満50㌶、2㍍以上5㍍未満10㌶、5㍍以上10㍍未満が10㌶未満で計約180㌶。壱岐市の面積は約1万4千㌶で、全体の1・3%程度で1㌢以上の浸水の可能性がある。
活動が起きた場合に最高津波水位となる「西山断層」は、福岡県宗像市沖ノ島付近から朝倉市にかけて分布する活断層帯で、全体の長さは約110㌔。その形態などから、沖ノ島南方の玄界灘から宗像市大島の北岸付近に至る長さ約38㌔の大島沖区間、大島北岸付近から飯塚市西部に至る長さ約43㌔の西山区間、嘉穂郡桂川町から朝倉市に至る長さ約29㌔の嘉麻峠区間に区分されている。
最新活動時期は2万年前から2千年前だったと推定されており、それぞれの区間単独で活動した場合、想定されるマグニチュード(M)は7・3~7・6程度だが、複数の隣接する区間が活動した場合はM7・9~8・2程度になる可能性がある。
第1版では県沿岸に最大クラスの津波をもたらす5つの津波断層モデル(①南海トラフケース5②南海トラフケース11③大村‐諫早北西付近断層帯④雲仙地溝南縁東部断層帯と西部断層帯の連動⑤対馬海峡東の断層)を想定し、壱岐沿岸は対馬海峡東の断層が活動した場合に、影響開始時間99分、最大津波到達時間112分、最高津波水位4㍍の想定だった。
だが国交省・内閣府・文科省が平成26年8月に公表した「日本海における大規模地震に関する調査検討会」の調査結果で、西山断層及び北方延長部の断層大すべり左側を追加したことで、第2版ではこのモデルも選定した。
市危機管理課などでは、今回県が公表した新たな津波浸水想定、津波災害警戒区域(案)などを基準に、市防災計画の見直しに着手する。