市地域おこし協力隊員で海女後継者の大川香菜さん(31)と夫の大川漁志さん(34)が、壱岐で初のゲストハウス(バックパッカー向けの安価な宿)「みなとやゲストハウス」を今春、芦辺町芦辺浦にオープンする。改装費用などを調達するため、昨年12月22日からクラウドファンディング(インターネットを通じて資金調達を行う方法)を仕掛けたところ、全国から賛同者が殺到し、目標額の百万円を突破し取引成立。25日までに134万円に達しており、カフェ&バーの設置、体験型ガレージ改修工事の目途が立った。海女として地域振興に取り組むため岩手から壱岐に移住した香菜さんの夢が、また一つ叶おうとしている。
協力隊の3年間の任期が今年3月に迫り、香菜さんは約1年前からゲストハウス建設を計画。「海女の仕事はとても楽しいが、漁期が限られているので、漁期以外は他の仕事をしなければ生活ができない。海女漁などで獲った海産物を、壱岐を訪れた人たちに堪能してもらい、壱岐の素晴らしさや海女漁のことを多くの人に知ってもらいたい」と、プロ釣り師の漁志さんとともに、収穫した海産物を提供するリーズナブルな宿泊施設づくりを目指した。
改装が可能な物件を探しまくり、芦辺浦にある元遊郭だった築約百年の古民家を購入。昨年10月から夫婦2人で自力で改装に着手した。だが古い建物で、長く使用していなかったこともあり、予想以上に改修規模が大きくなった。また宿泊者がよりくつろぎやすいようにカフェ&バー施設の設置、ウニ割り体験やバーベキューなどができる体験型ガレージを別に設けることを考え、新たな資金調達方法として注目されているクラウドファンディングの実施を決めた。
香菜さんは「クラウドファンディングでの目標額達成が難しことは判っていが、もしも失敗したとしても、壱岐の宣伝になるのではないかと思いました」と目標額を百万円に設定。だが開始当日から島内のフェイスブック仲間などが紹介したことで全国に拡散した。
資金調達は1口3千円から30万円まで7コースを設定。金額や寄付者の居住地により、「リターン」と呼ばれるお礼の品として、1万円コースでは、ドミトリー無料宿泊チケット2枚(壱岐に来られない人はオリジナルTシャツ2枚)、イラスト付きメッセージカード、オリジナルステッカーを用意した。
「反響は予想以上。知り合いだけでなく、まったく見ず知らずの人も協力してくれ、本当に感謝、感謝です」(香菜さん)。開始から24日目の1月15日に目標の百万円を突破し、プロジェクトが成立。募集期間は2月20日まで続き、次の目標の150万円へ向けて、1月25日までに10万円コース3口、5万円コース1口など大口支援を含め、103口134万3千円が集まっている。
屋号は「みなとや」と決めた。この古民家の元々の屋号であり、地元の高齢者からも親しまれている名前であることから、地元に愛される施設にしていくためだ。「クラウドファンディング以外にも、改装に際して島の人たちにいろいろな支援をしてもらっている。時代物の欄間も頂きました」と2人で磨いてカフェ&バーのインテリアとして活用している。
「海に囲まれた陸前高田で育ち、壱岐で夢だった海女という仕事に就くことが出来た。そしてやはり自分で収獲した美味しい海の幸を食べる人の顔が見たい。海女文化をたくさんの人に、楽しく美味しく知ってもらえる、みんなが楽しめて素敵な縁が生まれる宿を作りたい」と香菜さんは3月末に予定しているオープンへ向けて、手作り改修工事を急ピッチに進めている。
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