一支国博物館の第73回特別企画展「川瀬巴水 旅と郷愁の風景」が18日に1階テーマ展示室で開幕した。6月8日まで。観覧料は一般400円、小中高生200円。5月13日から展示替えが行われ、計90点の作品が展示される。
巴水は大正から昭和にかけて活躍した木版画家。日本の原風景を求めて全国を旅し、庶民の生活が息づく四季折々の風景を描いた。版元の渡邉庄三郎(現・渡邉木版美術画舗初代)らとともに、木版画の伝統を継承しながらより高度な技術の活用を求める「新版画」をけん引する存在として人気を博した。
作品展は、巴水の作品集「旅みやげ第三章」「東京二十景」「東海道風景選集」「日本風景集東日本篇」「日本風景集Ⅱ関西篇」などから代表作をピックアップ。さらに米国で発行された雑誌「The Japan Trade Monthly」の表紙を飾った作品、絶筆となった「平泉金色堂」の展示、記録映画「版画に生きる 川瀬巴水」の放映が行われている。
河合恭典副館長は「北斎、広重の時代に一世を風靡した木版画が、明治以降は印刷技術の発展で廃れていく。その中で木版画を日本文化として継承していこうと、渡邉庄三郎らが新版画運動を起こした。その栄枯盛衰の流れを見てもらいたい。また巴水自身も関東大震災に被災して188冊もの写生帖を焼失したり、スランプに陥ったり、ようやく復活した矢先に太平洋戦争になってしまうなど、波乱万丈な画家人生を送った。一方で、海外で高い人気を誇り2~3万枚も刷る人気作があったり、スティーブ・ジョブズがコレクションをするなど、世界的に高い評価を受けた。版板も北斎は7~8枚、広重は20枚程度だったのが巴水は30~40枚も使い、色彩のグラデーションなど奥深い色合いを表現している。巴水の作品展はどこも大人気で、壱岐で開催できるのは本当に嬉しいことです」と作品について説明した。
須藤正人館長は「巴水はすごく著名な画家というわけではないと思うが、風景と市井の人々が描かれた画風は、観る人の年代、経験などによって感じ方が違うと思う。放送中の大河ドラマ『べらぼう』で蔦重と画家たちとの関係は、巴水と渡邉庄三郎の関係によく似ており、その点も興味深いのではないか。難しく考えずに、作品を楽しんでもらいたい」と話した。
文化・芸術
木版画家・川瀬巴水作品展開幕 一支国博物館特別企画展
