壱岐高校東アジア歴史・中国語コースの生徒23人が発掘調査を行い、壱岐の歴史解明に挑んでいる。7月28日と30日、芦辺町の定光寺前遺跡を発掘し、土器や磁器、滑石の紡錘車などの破片数十点を発見した。今回の発掘成果を踏まえ、同遺跡南の都城跡、興触遺跡との関連も視野に歴史研究を深める。
同コースは昨年度から県埋蔵文化財センター東アジア考古学研究室と共に、定光寺前遺跡を発掘しており、昨年度は古代末から中世の中国製の白磁や青磁、朝鮮半島産の陶磁器、土師器が見つかっていた。今年は前回の調査区(約5×2㍍)2か所を引き続き発掘。同研究室職員の手ほどきを受けながらねじり鎌とスコップの使い、昨年度調査で埋め戻していた表土を掘り返した後、未解明だった更に下へ約3㌢ずつ掘り込んだ。
出土した土器の破片には、ろくろから糸で切り離す際にできる線状の痕跡があり、平安時代終盤以降の物と判明。また、皿状の土器がそのままの状態で見つかったことから、上流から流れてきたわけではなく、意図的に人が捨てたものとみられ、人が生活していた可能性があることがわかった。
発掘作業では、研究室文化財保護主事の白石渓冴さんが作業の意味や手順など指導。生徒は講義だけでは感じることができない土を掘った時の硬さの手ごたえや色、匂いを感じ取り、白石さんが「これは陶器?白磁?青磁?」などと投げかけると、生徒たちは授業を思い出しながら答えていた。
東アジア考古学研究室は当初、講義や発掘体験、土器づくり体験などの指導を行ってきたが、17年度から奈良大学主催の全国高校歴史フォーラムに研究論文を応募するため、フィールドワークと整理作業を行うことで専門的知識や技能を習得する形に変え、17年度から馬立(もうたる)海岸遺跡、大久保遺跡、車出遺跡群の研究を実施。昨年度は同フォーラムで上位3編の1つ、奈良大学創立50周年特別賞を受賞している。今年の発掘調査は来年度のフォーラムでの論文に活用する見込み。
将来、考古学の道に進みたいという1年の中上海大さん(15)は「ほかの学校にないことなので、この特色を生かして、将来に役立てたい」と話した。
▽定光寺前遺跡とその周辺遺跡 定光寺は壱岐名勝図誌に平清盛が建立した寺院と記載され、古代の壱岐国府があったと推測される場所の一つ。周辺には興触遺跡と覩城跡がある。覩城跡は平治の乱で源頼朝を討った長田忠致が壱岐守に任命させて築城させたものとされ、中国、ベトナムなどの貿易陶磁器が多数出土している。定光寺前遺跡は弥生時代から中世の遺跡として昭和60年に周知されて以来、発掘調査が行われていなかった。