県原子力安全連絡会(会長・豊永孝文県危機管理監)が7日、壱岐の島ホールで開かれ、九州電力玄海原子力発電所(佐賀県玄海町)3、4号機の再稼動に関わる安全対策など情報の共有化と意見交換を行った。玄海原発から30㌔圏内の関係4市で毎年1回開催しており、今年は本市での開催が最初。15日松浦市、16日平戸市、12月15日佐世保市での開催が続くだけに、NHKをはじめ県内マスコミからも注目を集めたが、意見交換では一部委員からだけしか意見、質問が出ず、再稼動に不安を抱く市民と委員とのギャップの大きさを浮き彫りにした。
九州電力はすでに国の使用前検査を開始している玄海原発3号機を来年1月に、同4号機を同3月に再稼動する方針を固めている。会の冒頭挨拶で白川博一市長は「全国で原発再稼動が続いているが、国民的疑問は残っている。国の政策に異を唱えるつもりはないが、市民の原発の安全性、風評被害への不安は強く、市議会でも再稼動反対決議を出した。これは市民の総意だと思っている。原発は100%安全ということはない」と再稼動に改めて反対の姿勢を表明した。
一方で「市民の安全安心を守ることがもっとも重要であり、現実を直視した取り組みを行っている」と三島地区の放射性防護施設の整備、島外避難の際に北九州方面での島民受け入れ自治体を確保する交渉などを進めていることを説明し、「原発に関する考え方はいろいろあるが、情報提供が必要不可欠」と国、九州電力に対して説明責任を追及した。九州電力立地コミュニケーション本部・古城悟副本部長は福島第一原発事故を踏まえた新規制基準と玄海原発の安全対策、重大事故に備えた訓練などについて説明し、再稼動へ理解を求めた。
意見交換で質問、意見を述べたのは、郷ノ浦町公民館連絡協議会・長岡信一会長ら2人だけだった。長岡さんは「基本的に再稼動反対だが、国の政策が変わらない限り避けられないし、自治体同意は法的根拠がない。それならば九電、国などには100%近い安全対策を取ってもらわないと困る」と病院・福祉施設のシェルター設置、事故が起きた際の組織編成、津波対策、住民への説明、放射性廃棄物の処理などについて問い質した。九電は「福島の事故では情報が混乱したが、現在は国の災害対策本部だけでなく、九電本社に社長が対応する本社本部、発電所に所長以下100人が詰める緊急事態対策所を設置して、組織立った対策ができるシステムを構築した。津波は国の想定で最大6㍍と計算されており、海抜11㍍以上の玄海原発は問題ない。住民への説明は訪問活動を行っており、壱岐市の公民館長241人すべてを訪問して現況を説明しており、今月下旬からは作成したリーフレットを持って再度訪問する」などと回答した。
放射性廃棄物の処理に関しては、小金丸益明議長の代理で出席した市議会・豊坂敏文副議長も質問したが、九電は「放射性廃液はガラス原料と混ぜ合わせ、ステンレス製容器に入れて固め、地下300㍍以上の深さの安定した地層中に最終処分する」と青森県六ヶ所村での最終処分方法について答えたのみで、六ヶ所村へ搬出できていないドラム缶が貯蔵容量に迫っている不安などについて、質問者は追及しなかった。連絡会の壱岐市委員は、副会長の白川市長をはじめ17人いるが、他の委員からは意見、質問がないまま、予定時間の余して会は終了した。また、連絡会の開催は県ホームページで告知されたものの、市ホームページ、回覧、防災無線、市内マスコミへの情報提供はなく、開催を知らなかった市民も多く、傍聴席に一般市民の姿は数えるほどしかなかった。
◆県原子力安全連絡会壱岐市委員 市・白川博一市長(副会長=関係4市市長)、議会・小金丸益明議長、消防本部・下條優治消防長、消防団・割石賢明団長、郷ノ浦町公民館連絡協議会・長岡信一会長、勝本町公民館連絡協議会・大久保敏範会長、芦辺町公民館連絡協議会・西雪晴会長、石田町公民館連絡協議会・山本良博会長、農業協同組合・川﨑裕司代表理事組合長、漁業協同組合組合長会・大久保照享会長、商工会・吉田寛会長、観光連盟・長嶋立身会長、PTA連合会・平田征史会長、地域婦人連絡協議会・安川哲子会長、壱岐医師会・江田邦夫会長、社会福祉協議会・末永榮幸会長、民生委員児童委員協議会・小畑孝昭会長