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水素貯蔵の実証実験に着手。約2千万円で調査・設計業務。

壱岐市は今年度から余剰電力を使って水素を作る「Power to Gas」に、本格的に取り組むことになった。市議会定例会9月会議の一般会計補正予算案にエコアイランド推進事業として約2千万円が上程され、18日の予算特別委員会で承認された。同議会には国内自治体で初となる「気候非常事態宣言」についての議案も上程されており、市は国から選定された「SDGs未来都市」(全国29地域)、「SDGsモデル事業」(全国10地域)の趣旨に則り、地球温暖化防止のための脱炭素化の実現へ向けて、「再生可能エネルギー100%のしまづくり」に挑む。

「Power to Gas」は再生可能エネルギー(太陽光、風力など)の導入を促進するため、余剰となる再生可能エネルギーを水素として貯蔵し、必要に応じて再エネルギー化するシステム。補正予算額の2006万8千円のうち、1970万円が国のエネルギー構造高度化・転換理解促進事業補助金から充当し、本年度は水素エネルギー化実証システム導入のための調査・設計業務を行い、来年度に実証試験システム設備を約2億円かけて導入する。

地球温暖化防止対策の観点から、再生可能エネルギーの導入拡大は極めて重要だが、本市は九州本土と海底ケーブルでの系統連系がされておらず、また揚水発電も行っていないため、供給量過剰による大規模停電事故を回避するために、再生可能エネルギーの接続可能量は太陽光5・9MW(メガワット)、風力1・5MWに制限されている。だがすでに制限を超える接続がされているため、冷暖房などの需要が少なく太陽光発電量の多い「春季・好天・日曜」を中心に、出力抑制が頻繁に行われている。九州電力ホームページによると、昨年3月3回、4月10回、5月5回、今年5月10回、6月2回の出力抑制が実施されている。

また九州電力などは大型蓄電池により余剰電力を貯蔵する実証実験を実施しており、本市にも4千キロワット蓄電池が設置されているが、蓄電池は高額なうえに貯蔵期間は1週間以内と短いため、まだ普及には時間がかかる状況だ。そこで白川博一市長は「出力抑制で無駄になってしまう再生可能エネルギーを水素として貯蔵し、需要に合わせてエネルギーとして有効活用するため、水素実用化実証システムの導入に係る調査・設計業務を行う」と行政報告で明言。「再生可能エネルギー導入比率を2030年に24%、2050年までの早い段階までに100%を目指す」と目標を示した。

再エネ水素製造・貯蔵の実証実験は、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)と民間企業、大学などが共同で福島県浪江町、北海道稚内市、山梨県甲府市の3か所で2020年度まで実施されているほか、神奈川県川崎市や関西国際空港などでも行われているが、系統連系されていない離島では初の試みとなる。

市SDGs未来課は「地球温暖化防止が大きな目的ではあるが、北海道や千葉の大規模停電を見て、電力の重要さが改めて示されている。ディーゼル火力発電だけに頼っていたら、いつ何が起きるか判らない。多様なエネルギー源を組み合わせたエネルギーミックスの考え方が重要だ。2020、21年に水素貯蔵の実証実験を行い、22年からシステムを稼動させ、系統連系されていない全国離島のモデルにしていきたい」と話した。

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