いまの壱岐市の最も大きな課題が「人口減少問題」であることは、誰もが承知していることだろう。合計特殊出生率は減少傾向にあるとはいえ、都市部に比べればまだかなり高いが、それでも人口維持に必要とされる「2・0」には程遠いし、高齢化の進行で自然減は増加の一途を辿っている。
また高校卒業生の9割が島外に進学・就職するため、移住者は多少の増加が見られるものの、社会減も一向に解消されない。市、市教委などは「高卒者が島内就職するように、一旦島外に出た人はどこかのタイミングで壱岐に戻ってきてもらえるように」とふるさと教育に力を入れ、市商工会に職場環境の改善などの要望を続けているが、結果が出るには時間がかかる。
社会減の最大の原因は島内企業の給与の低さにあると記者は考えている。人手不足のため求人は多くあるが、特別な資格を持たない場合は、正社員であってもほぼ県最低賃金水準で賞与もない。長崎県の最低賃金は898円でほぼ全国最低レベルだ。この時給では月給は月15万円程度、税金、社会保険料などを引くと手取り10万円強にしかならない。
本市は離島ならではの物価の高さもある。一部地場産品を除いた生鮮食料品や生活用品は、離島への輸送コストが含まれるため割高だし、自家用車は生活の上で必需だがガソリン代は全国最高レベルの高さだ。それでも実家暮しなら何とか生活はできるだろうが、Iターン者などは福岡中心部並みの家賃がかかるので、この給料で生活は難しい。UIターン者が増えないのは当然に思える。
県労連は若年労働者が本県で生活するのに最低限必要な「最低生計費」を「少なくとも時給1500円」と試算した。それでも手取りは20万円前後で、家賃、光熱費、通信費、自家用車などを考えればかなり苦しい生活になる。まずは本市の経営者が、いまの給与体系では労働者が集まらないという現実をしっかりと見据えた上で、行政とともに給与水準改善策を講じていく必要がある。