一支国博物館の第67回特別企画展「老松山壱岐安国寺展」が17日に1階テーマ展示室で開幕した。1月8日まで。入場無料。
安国寺・利生塔は、室町幕府初代将軍足利尊氏と直義兄弟の開基で、元弘の乱以来の戦没者の鎮魂と天下泰平を祈念し、全国66か国2島に設置された。壱岐国では臨済宗の僧・無隠元晦の開山により、海印寺が壱岐安国寺にあてられた。
全国の安国寺・利生塔は、尊氏・直義兄弟がこの世を去って以降は、中世~近世~明治維新と時代が下るにつれ廃絶や主旨替えを余儀なくされたが、壱岐安国寺は紆余曲折を経ながら現在まで約700年間続いている。その間、28代にわたる住持(住職)の記録と様々な資料が伝わるが、それらの詳細は多くが知られていない。
今回の展示は昨年3月、応永年間の壱岐安国寺文書3点が、他の中世文書と併せて「壱岐安国寺の中世文書」として県文化財に指定されたことを記念して開催。普段は展示されていない壱岐安国寺所蔵の仏像や古文書、第24世住持・白華和尚が作った陶器や発掘した須恵器、同寺と関係が深かった禅僧で画家の仙厓義梵の作品など45点が展示されている。
河合恭典副館長は「今回の展示のために調べていたら、十一面観音菩薩坐像の台座裏にいつ、誰が寄進したものかが書かれていることが新たに発見された。またかつての住持の家に伝わっていた陶器は白華和尚の制作であることも判明した。安国寺に関してはまだ十分な調査が行われていないので、これからも多くの発見があるはずだ。安国寺が建立された南北朝時代は、歴史的にかなり複雑な時代だったため、判明していないこと、理解されていないことが多い。この展示を通して、中世と壱岐の歴史、なぜ壱岐安国寺は残り続けることができたのかなど、興味を持っていただけたら嬉しい」と説明した。
また「12月3日は壱岐学講座『壱岐安国寺と白華和尚こぼれ話』を開くので、私もそれまでにもっと勉強して、判りやすく説明できるようにしたい」と話した。