来年4月に開設予定の民間認定こども園「いきひかりこども園」の計画が撤回された。1月に地鎮祭が行われた後、なかなか着工されなかったため心配する声もあったが、入園を考えていた保護者としては最悪の結末になってしまった。
現時点で理由は発表されていないが、激しい一部の反対の声が撤退の決断につながったことは明らかだ。子どもたちの安全安心は何よりも重要なことで、同園の立地状況に一部の人たちが危惧を抱いていたことは判らないではない。だが、設置するのは民間事業者であり、法令に則って設置・運営されるのだから、「危険」と感じれば子どもを預けないという選択肢が保護者にはあった。補助金の一部に市負担義務があったとはいえ、一民間事業にここまで騒ぎ立てることが正当なものだったのだろうか。大きな疑問が残る。
建設計画では、保育時間は延長保育も含めて午前7時から午後7時まで。送迎はマイクロバスとワゴンの2台で、自宅そばから乗車でき、運転手とは別に添乗員も乗車。乗降チェック表で複数人が確認する。子育て支援事業として親子の集い、教育保育相談、育児支援家庭訪問を実施。知育遊具や制作造形など保育環境を整える。昼寝にはコットを導入。給食にも工夫を凝らす。感染症対策には風除室、室内換気ファンの設置、空気清浄機や電解水の使用も予定したという。公立ではなかなかできない民間ならではの保育サービスが整っており、魅力を感じる保護者も多かったはずだ。
県、市は新年度当初予算案の最重要事業として「子育て支援」を掲げている。子どもを産みやすく、育てやすい環境の整備は何よりも重要なテーマである。人口減少は深刻な問題だが、子どもの数が減少していることで本市では年度当初に保育園の待機児童はゼロが続き、保護者に保育園を選ぶ選択権があった。民間の参入は選択肢が増えるという面で歓迎できたはずなのに、突然の撤退の影響は極めて大きなものになるだろう。