勝本町勝本浦の一部を埋め立てて、新たなまちづくりや観光拠点としての整備を進めていることが、県壱岐振興局と市への取材でわかった。
計画案では、同湾最奥部を埋め立て、辰ノ島の遊覧船が着岸できる浮桟橋や駐車場などを整備する。
計画通りに進めば、現場の岸壁は昭和35年に護岸工事が行われて以来、約60年ぶりの変貌を遂げる。
整備事業は、国の平成31年度地方創生港整備推進交付金を活用する。総事業費は9億円で、負担内訳は国が6割、県が4割。昨年度から測量やボーリング調査を始めており、本年度中の着工、令和5年度までの完成を目指している。計画案では、勝本地区公民館前の県の臨港道路は、カーブを緩やかに改良し一部に歩道を新設した上で、岸壁から海側に最大40㍍弱埋め立てる。埋立地には遊覧船2隻が着けられる長さ18㍍、幅5㍍の浮桟橋を1基設置。漁協前にある現在の出航地から移転させる。埋立地には遊覧船の切符売り場などの建物の建設も想定されている。
現在、漁船が停泊する湾東側の岸壁と堤防は、岸壁を海側に拡張するなどした上で、漁船を係留する小型の浮桟橋を2基設置する。
今回の計画は、勝本町漁協が同浦の観光振興を目的に商工会などにも持ち掛け、市、県に整備を要望。平成29年11月には同漁協、商工会、公民館、船主会などでつくる勝本浦部活性化推進協議会(会長・大久保照享同漁協組合長)を設立し、具体的な整備案や効果的な勝本浦の周遊コースを話し合っている。
計画の背景には、辰ノ島遊覧船の利用者の増加がある。本市海域の中でも高い透明度を誇り、蛇ヶ谷に代表される景勝地を持つ辰ノ島は、観光客の人気が高まっており、SNSを通じてその広がりは拡大している。
同漁協によると遊覧船の利用者数(概算)は、同17年7200人、20年9800人、23年には1万人を突破。27年1万6300人、昨年は2万3200人と急激に増えている。その一方、乗客が勝本浦の商店街に足を運ぶケースは少ないという。
イカ釣り漁で北海道に出漁してきた経験があり、日本海の各港の観光に対する姿勢を見てきた大久保組合長は、「乗客は増えているが、遊覧してすぐに帰ってしまっており、商店街に波及効果がなくもったいない。勝本漁協の一人勝ちのようになっている」と指摘。「勝本浦は天ヶ原から馬場先まで後背地は崖で利用できる土地が少ない特徴がある。このままでは若い人や後継者が減ってしまう。人を集めることが大切」と話した。
埋め立て予定の勝本湾最奥部