国土交通省大阪航空局(川勝弘彦局長)は5日、オリエンタルエアブリッジ株式会社(ORC、本社・大村市、日野昭社長)に対して、飛行機の不適切な整備処理、安全管理体制の機能不全があったとして、業務改善勧告と安全統括管理者の職務に関する警告書を出した。同局によると、同社のボンバルディア式DHC‐8‐201(Q200)型機は6月7日の飛行後点検時にオイル漏れを確認したが、担当確認主任者は整備規程に基づく作業をせず、同18日に発電機を交換するまでの間飛行させた。8月5日までに再発防止に向けた措置を報告するよう同社に求めている。
同機で最初にオイル漏れが確認されたのは6月6日の飛行後点検。6月2日に交換し左側エンジンに取り付けた交流発電機から漏れを発見したが、発電機のオイル漏れに関する基準がないことから、交換することは決定したものの、発電機の在庫がなかったことから交換を行わず、オイル漏れをモニターすることとして、口頭で申し送りを行った。
同7日の飛行後点検でオイル漏れ量を確認したところ、前日より増加し、左側エンジンのカウル(走行風を整流するためにエンジンを覆う部品)下面から漏れがあることが確認されたため、エンジン・ギアボックスにある排出管出口に、整備マニュアルで認めていないキャップを取り付けた。また13日には漏れたオイル量がこれまでよりも増加したことから、発電機を交換しないと飛行できないと判断。2日に要修理品として保管していた残時間50時間の発電機と交換したが、整備規程では認められていないものだった。新品の発電機には18日に交換した。同社は「運航の安全性に影響はなかった」としているが、8~18日までに計約100便が不適切な状態で運航されていたことになる。
勧告では、4月末から機材不具合により欠航が連続して発生し、整備担当者がこれ以上欠航させられないという圧力を感じていた上、整備部長から欠航は極力回避するようにとの発言があったことでさらに圧力を感じていたと指摘。また整備部長は関連法令や会社規定の順守など具体的な取り組みを行わず、事実を14日に知ったものの重大な事態と認識せず、詳細把握は17日となり、安全統括管理者への報告は19日だった。安全統括管理者は不適切事項の内容について正確に把握しようとせず、報告を受けてからの対応も不十分で、安全管理体制が機能していないとした。その上で、①安全意識の再徹底とコンプライアンス教育の実施、②安全管理体制の再構築、③整備規程に基づく適切な整備業務の実施を求めた。
同社は「このたびの業務改善勧告を厳粛に受け止め、今後、このような事態が再発することがないよう、再発防止策を実施するとともに、安全管理体制を再構築し、信頼の回復へ向けて会社を挙げて取り組む」とコメントを発表した。
本市の白川博一市長は「勧告に従い、安全運航に万全を期してもらいたい。欠航させないための措置だったようだが、安全第一であることが当然で、本末転倒だ」と厳しく批判。一方で「根本的な問題点として機材の老朽化が進んで故障・欠航が多くなっていることがあるとは思う。この状況では観光・ビジネスとも航空機利用の予定が組めず、影響が出る恐れがある」と懸念を示した。また「今回の問題で他の離島からはQ400型機を導入して欲しいという声が挙がるかもしれないが、同型は壱岐空港の滑走路では離着陸できない。フランス・ATR社の航空機導入もパイロットの養成などが必要だし、簡単に進む話ではない。本市としては引き続き県、国に壱岐空港滑走路延長を要請していきたい」と話した。
ORCによると、今年4月以降の機材トラブルによる欠航は、4月3便(壱岐路線0便)、5月5便(同1便)、6月30便(同9便)。1機分の機体の更新(同じQ200型機)はすでに契約を終えており、年明けまでには導入が予定されているが、もう1機の更新をどうするかはまだ方針が決まっていないという。