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「豊富な資源を一方向へ」~国、県予算の有効活用を主導。黒﨑振興局長インタビュー

4月1日付けで大㟢義郎局長に代わって、黒﨑勇局長(56)が壱岐振興局に着任した。壱岐市への赴任は初めてだが、市町村課市町村合併推進室、合併・新市町支援室では、何度も本市に足を運び4町合併を実現に導き、合併に伴う諸問題解決に奔走。ナガサキ・グリーンニューディール推進室長としては五島の超小型EVプロジェクトなど、地域活性化にもつながる循環型社会・自然共生社会の実現に向けて新産業創造に着手。また直近の漁政課長としては、本市の大きな課題となっている漁業問題の解決に取り組んだ。これらの経験を活かし、壱岐振興局長として本市をどのように導いていくか、聞いた。

▽2004年の4町合併から15年目を迎え、現在の姿は当時想像をしていた通りになっているか。
黒﨑 厳しい財政状況が合併の理由だったが、それでも元来資源が豊富で、4町とも力のある自治体だという印象だった。合併についての住民への十分な周知と協議のために足を運んだが、住民組織による合併要望の署名率は高く、自立心が高かった。合併後の市議会の解散の賛否を問う住民投票は圧倒的な賛成多数で可決され、たくましく感じた。合併から15年が経過し、予定されていた新市庁舎が建設できなかったなど課題はあったのかもしれないが、合併による財政削減効果は出ており、各種財政指標も健全に推移。財政上は懸念する問題はないと思っている。旧4町の意識は残っていると言うが、無理に一緒にする必要はなく、横の連携を保ち、お互いの良さ・悪さを認めて話し合っていけばいいのではないか。ただ、将来の発展へ向けての投資は行っていくべきで、その点を県としてもリードしていきたい。

▽将来へ向けての投資という面では、市は県に対して壱岐空港滑走路延長を強く要望している。また郷ノ浦港の浮き桟橋、芦辺港のターミナル一体化の必要性は。
黒﨑 空港滑走路に関しては、中村知事は「費用対効果」という話をしておられた。人口減少が続く中で、航空機を大型化することにどれだけの需要があるのか。観光客数を伸ばすなど搭乗率を高め、その需要を示していくことが実現につながるのではないか。郷ノ浦港の浮き桟橋については、本庁にいた時からよく話を聞いている。高齢化社会の中で、車いす利用者の利便性、けがの心配もあり、ニーズははっきりと見えている。急いで対処しなければならない問題だと認識している。芦辺港のターミナル一体化も必要だが、郷ノ浦港とは時期をずらして、計画的に行う必要がある。郷ノ浦、芦辺、印通寺とフェリーターミナルが3港ある点に関しては、確かに維持管理のコストがかかっていて、将来的には統合も必要かもしれないが、強風時の使い分けなどの役割もある。

▽本市の最大の課題は人口減少、第1次産業の衰退だと思われる。
黒﨑 人口減少は全国的な問題で、自然減は解決が難しいが、社会減は第1次産業が活性化されれば、後継ぎが必ず出てくると思っている。水産業に関しては、国が70年ぶりに漁業法改正を行い、企業参入を促し、漁業権の抜本的な見直しを行って、持続可能な資源管理に着手している。それに伴い水産庁の予算も、これまでの2倍となった。この予算を十分に活用して、栽培型漁業の振興、ブランド化を図り、漁獲収入を増やすべきだ。儲かる漁業にしていけば、配偶者、子ども、後継ぎが張り付くようになり、人口減少対策にも効果が出てくる。農業に関しては、先日、初めて子牛せり市を見学したが、とても盛況で平均80万円を突破していた。壱岐の子牛が全国の著名和牛の素牛になっていることは誇るべきことだし、子牛のブランドとしてもっと売り出すことができないだろうか。長崎にも「いきなりステーキ」が2店舗オープンして、先日、そこで和牛と輸入牛を食べ比べてみたが、確かに和牛は高いが、味はまったく違った。TPPで輸入牛肉が増えても、和牛は絶対に負けないと確信した。増頭対策を進めるべきだ。

▽漁業者が直面している問題として、マグロ資源管理がある。壱岐のマグロ漁師は自主的に産卵期の操業自粛を行うなど資源管理に取り組んできたが、国の資源管理の方針との違いに戸惑っている。
黒﨑 その面で、壱岐の漁師の資源管理意識に、国、県が追いついていない面は確かにある。ただ国としても、国際協議の中で決定したことであり、なかなか現場の声を反映できていない。その溝を埋めるように、県として国に働きかけていく。ただ、大西洋クロマグロのように、資源管理に成功すれば、漁獲収入は回復できる。それまでの間、つなぎとして他魚種への転換、新漁法の導入などでつないでいく必要がある。浜の活力再生プランなどで設備投資にはかなりの補助ができるので、中小企業診断士などの助言を得て、新たな挑戦を行ってもらいたい。ぜひ手を挙げてもらいたい。時化の日でも仕事ができる第2プランを用意していく必要もあるし、漁業者の理解が得られれば、海は洋上風力発電などでの利用価値もある。

▽着任して2週間が経過したが、実際に壱岐に住んでみた印象は。
黒﨑 あらゆる面で資源が豊富な場所だと感じている。まず印象に残ったのは神社の多さとそれに伴う伝統行事だ。住吉神社の園遊会に呼んで頂いたが、日本でも指折りの格式高い神社であることを初めて知った。このようなストーリー性は、大きな観光資源になるはずだが、長崎県人でも壱岐に来るまでは知らないことだった。先日、勝本町漁協の大久保照享組合長に自家製のイカの塩辛をごちそうしてもらったが、これまでの概念が変わるほど美味しかった。だが趣味でつくっているもので、販売はしていないということで残念に思った。壱岐にはそのような素材が多数ある。だがそれが分散していて「団子」になり切れていない。ベクトルが多方向に向いてしまっているのがもったいない。「本物」にするためには地域が一体となって努力を一方向に集中させる必要がある。私も赴任中に、1つでも壱岐の資源を取り出せるように頑張っていきたい。

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