壱岐観光の目玉施設を目指して、壱岐イルカパーク(勝本町東触)の再生計画が始まった。国の地方創生推進交付金事業(本年度5250万円、約2分の1補助)を活用し、平成32年度までに生簀(いけす)と外仕切り網の間に中仕切り網を設置し、飼育水域を増やす。施設整備後は飼育頭数を増やし、より多彩なイルカショーを実施。他のイルカを飼育している水族館との差別化を図るために、11年まで実施していた、入園者がイルカと一緒に泳ぐことができるドルフィンスイムの復活を目指す。またイルカパーク内での繁殖にも取り組む計画がある。
壱岐イルカパークではこれまで、高齢の「あずき」以外はパーク内の生簀の中で飼育し、そこでショーも行っていたが、入園者からは「狭い生簀ではイルカがかわいそう」などの声があった。ショーとしては1日3回の「プレイングタイム」で、ジャンプやボールを使った芸などのミニショーを披露(無料)。有料のメニューとしては、間近でイルカを見ることができる「ドルフィンウォッチ」(300円)、イルカに魚をあげる「えさやり体験」(550円)、ゴールデンウィーク中は限定的にイルカとツーショット写真が撮れる「ドルフィンフォト」(800円)も行われたが、ショーの迫力という面では首都圏近くの水族館などに見劣りし、その他のメニューもイルカの頭数が少ないことから利用できる人数は限られていた。
イルカパークは平成7年にオープン。16年度には5万1648人の入園があったが、その後は減少傾向が続き、28年度は2万1175人まで減少。29年度は2万5167人とやや持ち直したものの、16年度の半数に満たない数字となっている。観光客によるアンケートでも「30分程度しか楽しむことができない」「施設が何もなくて寂しい」など厳しい声が寄せられていた。市観光商工課は「イルカパークを一支国博物館とともに、滞在型観光の中核となる施設にしたい」との考えから再生計画に着手。まず今年度の計画として、飼育水域を増やすことでジャンプの際の助走距離を確保し、より豪快なジャンプやテールウォークなどができるようにする。また、新たな訓練のために専門トレーナーも採用する。
飼育頭数は現在5頭だが、「あずき」は高齢のためショーなどができるのは実質4頭で、各個体の負担が大きい。そのため今年度から毎年2頭ずつを購入し、33年度までに計13頭程度まで増頭する計画を立てている。中仕切り網が完成した後は、オスの「あお」「はじめ」とメスの「エイラ」「ステラ」による自然繁殖を試みる。出産後は授乳のため一定の広さの生簀が必要となるため、9×16㍍大型生簀の設置も今年度に予定している。これらの計画が順調に進めば33年度をめどに、11年まで行っていて好評だったドルフィンスイムの復活も検討している。水族館でのドルフィンスイムは現在、八景島シーパラダイスなど全国5か所でメニューに組み込まれているが、いずれもプールなどの閉鎖水域であり、限定的なメニューとして扱われている。外洋とつながった美しい壱岐の海でイルカと一緒に泳ぐことができれば、壱岐イルカパーク独自の体験メニューを確立することができる。
またイルカだけでなく、ヤギやアヒルの飼育を行い、そのショーなど多角的な展示も検討していく。イルカパークの情報発信にも地方創生推進交付金事業(本年度2200万円、2分の1補助)を活用し、リーフレット作成、ウェブでの発信、写真・映像コンテンツの充実などソフト事業も一体的に取り組み、入園者の大幅増加を図っていく考えだ。