『がんばらんば長崎』地域づくり支援事業で県から採択され、1億2500万円の事業を実施している市観光連盟が目に見える形で動き出した。「第1回 壱岐市ご当地グルメコンテスト」だ。同コンテストに出品された料理は同連盟が進める“こだわりグルメプロジェクト”の一環として行われ、「今後、市内の観光関連事業者(宿泊や飲食、弁当、惣菜、製菓、農産加工品など)へレシピを提供。新たな壱岐の味わい作りの活動に活かしていく」とある。
当然、B-1グランプリなどの全国コンテスト出品を視野に入れていると思われるが、郷土料理ではないコンテスト作品が本当に壱岐島民に受け入れられると思っているのだろうか。
2012年、第7回B-1グランプリで、準優勝に当たるシルバーグランプリを獲得した対馬の“上対馬とんちゃん”は、戦後間もない北部対馬で在日韓国人により広められたのがルーツと言われる郷土料理だ。10年、北部対馬在住の有志により結成された“対馬とんちゃん部隊”は“上対馬とんちゃん”を活用した地域活性化を目的とし、まちおこし団体連絡協議会などと協議を重ね、郷土料理をアレンジすることに徹したという。
しかし、同コンテストは同連盟の意志や意向が感じられず、どういうコンセプトなのかもまったくわからない。募集要項にある“ジャンル”という項目で、“丼物 壱岐産米の上に壱岐産の素材をのせたもの”では企画が幼稚すぎると言わざるを得ない。
また、『第1回』ということは2回目も実施するということだ。もし、そうだとしたら1回目の最優秀作品を否定し、また新たな料理を採用するということにもなる。そんな手法で壱岐が本当に盛り上がるのか。
全国コンテスト出品は壱岐島のアピールになるだろうが、地元で愛される料理で島民が盛り上がる、『町づくりによる地域活性化』が本来の目的のはずだ。それなくして全国コンテストの出品はあり得ない。
同事業は平成25年から2年間だが、事業費がなくなっても継続できるものが必須のはず。このままのグルメ開発は本来の目的を失った一過性のものとなり、時が経てば何も残らない、壱岐島民が誰も知らない物になる。