社説

厳しい練習は「不適切」なのか

ドラマ「不適切にもほどがある」が話題だ。コンプライアンスが厳しい令和と、そうではなかった昭和を舞台とするタイムスリップ作品で、昭和育ちの記者には懐かしさと、昭和はこんなにひどかったのかと改めて感じる部分もある。脚本家の宮藤官九郎さんは、令和の行き過ぎたコンプライアンス縛りをシニカルに描きたい思いもあるようだ。
ドラマの主人公は昭和の体育教師で野球部の顧問。選手がミスをすると「連帯責任」で、全員に対して「ケツバット」を見舞わせる。昭和では普通に見られていた光景だが、当時もそのような体罰などに悩み苦しんでいた児童・生徒は多くいただろうし、現代では言語道断な行為である。そのような行為が厳しく咎められるようになったのは大きな進展だ。だが、スポーツ系クラブにはある程度の厳しさも必要なのではないだろうか。
先日行われた総合教育会議で、中学校部活動の地域移行について議論された。その中で「指導の過熱化を防止」するための方策が挙げられ、委員からも「勝利至上主義に陥ってはならない」との意見が出された。内容は概ね理解できるものだったが、運動会で順位を付けないのと同様に、スポーツ系クラブが「勝利を目指さない」ことが果たして正しいのだろうか。「楽しく体を動かす」ことは心身の発達のために重要だが、勝利を目指すからこそ真剣に取り組むし、勝利によって自信や喜びに繋がる。「苦しいからやらない」では体力、気力とも向上しないのではないか。
スポーツ力は学力と同様に、高校、大学への進学、就職にも有意義に働く。中学校時代のスポーツでの実績で、将来が大きく変わった生徒たちを壱岐でも数多く見てきている。大学のOA入試や就職活動のために、本紙に掲載されたスポーツ大会の記事を提出している人もいる。その多くの生徒は、優勝、1位を目指して厳しい練習に必死に取り組んでいた。過熱化防止の行き過ぎもまた、スポーツの本質を損なうようにも思える。

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