2017年からの本市にとって極めて重要な国策である「国境離島新法」の関連予算が12月22日に閣議決定し、新年度当初予算案に盛り込まれた。新法の中心となる航路・航空路運賃低廉化、特産品輸送コスト支援、雇用拡大、旅行商品支援などの「地域社会維持推進交付金」は国費50億円で、国の負担が約50~60%となるため事業費ベースで約92億円となる。その他、離島活性化交付金などが事業費ベースで約8億円増額、地方創生推進交付金などが同約18億円増額されるなど、関連予算の事業費総額は約118億円になる。国費以外の40~50%の県、市負担分は特別交付税措置される。
閣議決定後に会見を行った自民党離島振興特別委員長の谷川弥一衆院議員は、同議員の事務所が試算した航路・航空路運賃の低廉化料金を示した。その内容は12月17日に壱岐島開発総合センターで開いた国境離島新法報告会で非公式に話した数字と同じだったが、閣議決定を受けて文書で記者に配布した。
この文書によると、航空路をJR新幹線、航路ジェットフォイルをJR特急、フェリーを普通運賃として営業距離から算出すると、航空路の壱岐~長崎は現行島民割引往復1万4300円から9600円に、航路の壱岐~博多間はフェリーの同3370円から2590円に、ジェットフォイルが同6870円から5250円に、それぞれ低廉化されるとした。フェリーの壱岐~唐津は表には示されなかったが、報告会では3230円から1690円になると話していた。いずれも4月からの適用を目指している。
実際の引き下げ運賃は県、市と運航事業者が協議をして、来年4月までに決定することになるが、国境離島新法成立の立役者である谷川議員の試算と大きく離れた金額にはならないと思われる。
ただしリプレイス割引、通勤通学通院・学生・障害者割引については触れられていない。燃油価格が高騰して燃油サーチャージが有料になった際の対処なども含めて、今後の運航業者との話し合いが待たれる。
島民以外の観光客などについてはこの運賃割引は適用されないが、旅行者に「もう一泊」してもらうための旅行商品や観光体験などに対して支援が行われ、実質的に旅行者の負担を軽減する。
輸送費の支援としては、農水産物のうち生鮮品全品(23品目)の移出に係る輸送コストと、これら原材料の移入に係る輸送コストを低廉化する。すでに離島活性化交付金で4品目の支援があり、合わせて27品目の運送費用の6割を国が負担し、2割を地方公共団体が負担するため、事業者は最大で8割近い引き下げとなる。
雇用機会の拡充に関しては、雇用増を伴う創業・事業拡大について、運転資金を最長5年間支援する。創業時は年6百万円、設備投資を伴わない事業拡大は年1200万円、設備投資を伴う事業拡大は年1600万円が支援される。
これらの国の支援策以外に、市独自のアイデアでどれだけの事業を行い、予算を獲得できるかが、2017年からの壱岐市に課せられた大きな命題となる。