古い表現なら「黒船襲来」と言うのだろうか。いまの壱岐の状況は幕末に似ているようにも思える。国境離島新法の制定を契機に、様々な新しい風が吹いてきた。その風は、開国を迫った黒船と同様に、市民にとって必ずしも快いものばかりではないだろう。
人口減少対策の切り札として、壱岐市がもっとも力を入れているIki‐Bizのセンター長が決まり、ふるさと商社で実務を担当する地域おこし協力隊員も赴任した。ともに豊富な実務経験を持ち、壱岐の活性化に大きな戦力になってくれるに違いない。
だがビジネスの最前線で戦ってきた人たちにとって、壱岐のいままでの商習慣は「生ぬるい」と映る可能性がある。地域の団結はもちろん重要なことではあるが、みんながそれなりの幸福感を得られるように仲良くやっていく姿勢は、島外資本の大手から見れば「隙だらけ」と見えてしまう恐れがある。意識改革を迫られるケースもあるだろう。
他の地域からやってきた「よそ者」に、このような指摘・指導を受けることは、壱岐に限ったことではないが、地方の小さな地域の人たちには抵抗感が大きい。「島の実情も知らないくせに」という思いを抱くことは理解できる。だが古くからの慣習に従ってばかりいては、この厳しい現実の中で生き残っていくことは難しい。
先週号の本紙で掲載した安売りガソリンスタンドの進出は、その典型的な例だと言える。島内の既存スタンドが対抗していくためには、価格面での抵抗もある程度は必要だろうが、他のサービス面や複合業種化などで勝負しなければ太刀打ちできそうにない。Bizなどのアドバイスをどれだけ素直に聞き入れて、新たな挑戦をするかに今後の存続が掛かっている。変革には痛みが伴うものだ。
よそ者の意見に盲従するのではなく、市が月収100万円の高額で雇うIki‐Bizセンター長という黒船を、行政も民間も徹底的に活用する方法を探ることが肝心ではないだろうか。