2月28日に講演した福岡政行さんが高松丸亀町商店街(香川県高松市)の再開発で、定期借地権付き高齢者向けマンションが即完売している話をした。
それは「人が住み、人が集うまち」を目指した高松丸亀町商店街振興組合が構想から20年をかけて取り組んできた事業で、全長470㍍の同商店街をA~Gの7つの「街区」に分け、各街区ごとに特徴を持たせながら、段階ごとに整備していく計画である。
420年の歴史ある同商店街は近年、アーケードや街路の整備、施設の充実をはじめ、イベントで数多くの人を集めたが売り上げは伸び悩んでいた。「高齢化社会」と「人口減」が、今までの手法をまったく通用しないものにしていたのだ。
同商店街は瀬戸大橋の開通で本州と陸続きとなり、大手資本の売場面積拡大などで顧客を奪われ、その結果、市街中心部の地価が下落。市街は空洞化し、75人の高齢者しかいない商店街となった。
そこで同商店街は街の再開発は行政に任せるのではなく、「自分たちの街は自分たちで責任を持ち、リスクを負うことも考える。あくまでも民間主導で行うこと」とする、全国初の“民間主導型再開発”を目指した。
2006年に竣工したA街区に始まった再開発は、B・C街区の開発に伴う「住宅整備」も並行して行い、準備した定期借地権付きマンション47戸はすぐに完売。将来的には400戸販売予定で、ほぼ無人だった街に1500人を取り返すことになる。本当に住んでみたい街の実現に向け、みんなの広場や温浴施設、保育園、小学校など、昔の街には全て揃っていたはずの設備充実も検討されている。
この夢のような街を再構築するには「土地の所有権と利用権の分離」が必須で、地権者の権利を守るため、「土地は62年後に更地にして必ず返す」という内容の定期借地権を設定。地権者に再開発に関わるリスクの軽減にも努めた。
同事業は全国的にも規模が大きく、壱岐の現状には当てはまらないかもしれない。しかし、商店街や百貨店、大学、病院も、みんなが集まって何かを作り出す、多種多様な機関との連携を模索した手法は大いに参考になると思う。