JA壱岐市の定例4月子牛市が9、10日の2日間、芦辺町の家畜市場で開催され、平均価格が65万6294円を記録。前回の2月市場で記録した61万5660円を5万円以上も上回り、前回比106・6%の高値となり、3開催連続で歴代最高平均価格を更新した。個体別でも牝、去勢の最高価格は消費税込みで100万円を突破。通常の取引ではともに歴代最高価格を記録し、場内は活気がみなぎった。
入札価格を示す電光掲示板の数字がなかなか止まらない。30万円台からスタートして、牝も去勢も、かつては「大台」と呼ばれていた50万円突破が当たり前となり、70万円を突破しても誰も驚きの声を上げず、90万円突破には購買者からため息のような声がもれた。
初日の9日は162番「はな」(牝、父安福久、母ふく、母の父平茂晴=石田・堤安隆さん生産)が94万4千円で牝の歴代最高価格を記録すると、2日目の10日は291番「晴久」(去勢、父平茂晴、母ひとみ、母の父安福久=箱崎・永田勝利さん生産)が94万6千円と歴代最高価格を更新して落札。場内での表示はこの税抜き価格だったが、消費税8%込みの正式な落札価格はそれぞれ101万9520円、102万1680円と「百万円突破」の偉業を達成した。
JA壱岐市畜産部は「まだ柳田に市場があった30年以上前に、牝が160万円で取引されたという記述が残っているが、これは売り手、買い手に特別な事情があった取引だったようで、通常の取引としては記録されていない。今回の価格が牝、去勢とも歴代最高価格と認識している」と話した。
2日間トータルで718頭が入場し、717頭(牝316頭、去勢401頭)の取引成立。販売総額は約4億7千万円。平均価格は平成24年10月市場までは40万円台前半で安定していたが、その後は上昇を続け、25年8月市場で初めて50万円を突破。26年12月は約59万円、今年2月は約61万5千円と次々に歴代記録を更新し、遂に65万6千円台に突入した。
長崎平戸口中央市場(平戸市)は1月市場が平均61万円、2月は64万円、3月は63万円程度で取引。佐賀、熊本、大分の市場も62~64万円で取引されており、牝・去勢合計での65万円超えは九州でトップの価格となっている。
JA壱岐市・川﨑裕司組合長は「生産農家のことを考えれば、嬉しいの一言だ。他の市場も軒並み高値を記録しているが、壱岐はさらに顕著に数字が表れている。生産農家のモチベーションにつながってくれるはずだ。ただ、肥育農家のことを考えると、手放しで喜べないのがつらいところ。素牛(子牛)が全国で1割減少していることが高値の大きな要因だけに、JAとしてはとにかく増頭に取り組むことが肝心だ」と表情を引き締めた。
次回は6月1、2日、7百頭の入場で開催を予定している。
★種雄牛別成績
活況の市場を支えたのはやはり平茂晴の産子だった。牝は316頭中122頭(38・6%)で平均約61万円、去勢は401頭中170頭(42・4%)で平均71・2万円。頭数、販売価格とも市場の4割を占めた。注目の金太郎3は、平均価格が牝(14頭)61・8万円、去勢(17頭)72・4万円と、頭数はまだ少ないながら、価格では平茂晴とほぼ互角の評価がされた。