市議会9月会議予算委員会は、壱岐イルカパークに導入するイルカ3頭にかかる1128万円の補正予算案の審議で紛糾した。9月25日には福岡ビジョナリーアーツから預託されていた「JB」が死亡し、残っているのは推定30歳と高齢で、性格的な問題で触れ合い体験をすることができない「あずき」1頭だけになってしまった。
イルカの相次ぐ死亡には市民も心を痛めているし、はっきりとした死因が判明しない中での新たな導入には不安を感じている人も多く、市議会でもその点が議論されたが、現在の状況ではパークの営業自体が危ういものになってしまう。観光資源は豊富だが観光施設はやや乏しい本市にとって、パークが重要な観光資源であることは市民も納得していると思う。反対はありながらも導入の予算が可決されたのは、このままイルカパークを消滅させてしまうことを回避したかった意味もあったのだろう。
だが、これまでパークに導入されたイルカが、指定管理になる以前から平均3年以下しか存命していないことは、動物を扱う施設として根本的に考え直さなければならないことだ。野生のバンドウイルカの寿命は40~60年と言われている。飼育環境下になると寿命は15~18年程度という説もある。世界的な鯨類保全団体「WDC」の調査で、水族館で1年以上生きたイルカの平均生存期間は12年9か月だったとの結果を発表している。飼育環境下では寿命がかなり縮まるものの、それでも平均では10年以上生存しているのに、壱岐イルカパークでは3年に満たないというのは、単にパークでの飼育管理の問題だけではなく、奥まった入江という施設の場所にも大きな問題があるのではないだろうか。
市の試算によると、3年以下の存命でもイルカ導入の経済効果はあるとのことだが、元来、生きものに対して「経済」を持ち出すこと自体が不適切と考える人も多い。個人的には、3年しか生きることができないイルカを導入するのは、やはり反対だ。