芦辺町の百田歯科医院院長、百田昌史さん(64)がこのほど、歯科医の視点から睡眠呼吸障害について書いた「歯科医だからわかった 睡眠呼吸障害の治し方」(現代書林、191㌻、税込み1430円)を出版した。歯科界で初めて一般向けに睡眠・呼吸障害についてまとめられた本で、発売後には一時、大手通販サイトアマゾンの売れ筋ランキング「歯の医学」部門で1位となるなど注目を集めている。
百田院長は57歳の時、睡眠中に突然、謎の呼吸困難に陥ったことをきっかけに、口の中と睡眠呼吸障害の関係を研究。著書では自身の治療法を探る中で見出した、舌が喉の方向に落ちる「落ちベロ」が引き起こす体への悪影響やその診断の方法、改善するためのトレーニング方法を、自身の体験も交えて一般にもわかりやすくまとめた。
一般的に知られる睡眠時無呼吸症は、いびきや無呼吸の症状が現れることで医師の診断を受け、治療の段階に進むことができる。しかし、その診断基準に当てはまらない「軽症」の人でも落ちベロによって正常な呼吸が妨げられ、体調不良が現れるケースがあるという。
症状が現れないことから自覚症状がなく、日中に起こる体調不良の原因がわからず、治療したくてもどの診療科を受診すればよいか、わからないケースもあるという。
百田院長も当初は体調不良の原因がわからず心身ともに疲弊。一時は睡眠への恐怖心から「ああ、きょうも眠らないといけない」と考えるほどだったという。
百田院長は研究を進める中で自身の舌の筋肉の減少が起こり、口の機能が衰える「オーラルフレイル」になっていることを突き止め、舌を鍛えることで少しずつ睡眠時の呼吸が改善していった。
経営する歯科医院の患者の中にも「落ちベロ」となっている人も多く、睡眠呼吸障害が原因で体調が優れない人が潜在的にいるのではと考え、広くこの疾病を知ってもらおうと著書にまとめた。歯の診察の際にも落ちベロの「第一発見者」として、患者に改善法を指導して、睡眠呼吸障害の予防にも力を入れている。特に、コロナ禍によりマスク着用が増え、落ちベロの原因となる口呼吸となってしまうことにも警鐘を鳴らしている。
百田院長は「血圧の上昇や動悸などの体調不良は、睡眠呼吸障害によって引き起こされていることを疑う必要がある。(この本を読んでいただき)改善につなげていただければ」と話した。