14日に県1例目となる新型コロナウイルス感染者が本市で確認されたことを受け、市、壱岐保健所は対応に追われた。
白川博一市長らは14日午前11時から市役所郷ノ浦庁舎で記者会見を開き、京都府から12日に転入した陽性者(30歳代、自営業の男性)が確認されるまでの経緯、陽性者とその同行者2人(福岡県の50歳代男性、壱岐市の30歳代女性)の行動歴、陽性者と濃厚接触者の状況などについて、市民に向けて説明した。
その上で「行動歴はすべて把握しており、壱岐保健所で消毒などの必要措置を行った。市民は動揺しないように」と呼び掛けた。壱岐保健所・長田智貴副部長は「陽性者は(咳などによる飛沫感染がない)不顕性であり、感染が拡大する可能性は低いと考えている」と話した。
感染者の男性は、昨年本市で開かれたSDGs関連のイベントに参加し、本市を気に入り移住を決めた。12日に転入などの手続きを行い、14日には一旦、京都に戻る予定だった。だが12日の夕食中に、2月21日に神戸市のイベントスペースで、3月4日に大阪市で面会(濃厚接触)していた知人が感染者となったことをSNSで知り、壱岐保健所に電話で相談。13日に検体を採取し、PCR検査の結果が出るまではテントなどで1人で生活し、外出を自粛した。
福岡から同行した男性、12日夕方から合流した女性も、その夜からは車中やコテージで過ごし、外部との接触を一切避けている。
白川市長が「感染者、濃厚接触者が大変に良識ある行動を取ってくれたこと、保健所などの要請に応じてくれたことで、迅速かつ的確な対応を取ることができた」と話したように、市内での立ち寄り先は12日午後の飲食店、小売店、市役所、市施設、公衆トイレなど10か所程度で、壱岐保健所はそのすべてを把握。すぐに連絡をし、消毒を行った。
男性らが立ち寄った中には営業自粛した店もあるが、長田副部長は「ウイルスは通常の清掃、洗浄で除去できる。必要以上に恐れる必要はない。飲食店、小売店などは営業を続けてまったく問題ないと壱岐保健所では考えている」と明言した。
男性は不顕性のまま県壱岐病院に入院した。検体採取、入院に関しても、すでに情報が把握されてからの来院だったため、感染症患者専用入口・通路を通り、病院側も十分な準備で対処することができた。男性は14日に37・8℃の発熱があったが、その後は平熱に下がり、16日時点で全身状態は良好。
男性と行動を共にした2人の濃厚接触者は15日にPCR検査で陰性が判明した。濃厚接触後に時間が経過していないため、まだ安心することはできないが、約2週間の外出自粛生活後に再度の検査を行う予定だ。
男性が乗船したジェットフォイルで半径2㍍以内の席だった4人(いずれも島外在住)の濃厚接触者は、指定席のため乗船名簿から連絡先が判明し、県から外出自粛、発熱など症状がある場合は検査を受ける要請が出され、16日時点では症状は出ていない。
感染者と濃厚接触者の良識ある行動、県や市の準備態勢など様々な要因が重なり、今回のケースで本市での感染拡大は、現時点では回避できる可能性が高そうだが、今後も同様なケースは十分に考えられる。
また、新型コロナウイルスの全国的な流行ですでに本市への観光はほぼキャンセルとなっており、宿泊業、土産店などは深刻なダメージを被っている。市民も外出を控えているため、送別会、謝恩会などもほぼ中止になっており、飲食店、スナック、生花店なども危機的な状況となっている。それに追い打ちを掛けるように「コロナ発生」が全国で報じられたことで、本市の経済は窮地に追い込まれている。
市は15日、市商工会、市旅館業組合、市観光連盟など各種経済団体の代表者を集めて緊急経済対策会議を開いた。白川市長は「第1回ということで、今回は各団体の現状や要望を聞き取る段階だったが、早急に第2回を開き、国、県への要望に留まらず、市内金融機関に働きかけるなど、市独自の各種支援策も打ち出していきたい」と話した。