一支国博物館で開催中の「山本二三展」に合わせて、7月21日に特別講座「アニメーション美術監督・山本二三による制作実演」が同館で開かれ、約300人が参加した。同講座は3階多目的ホールの定員180人で実施予定だったが、当日は朝から整理券を求める列ができ、ホールに入り切れない120人は、別室でモニターを通しての観覧となる大盛況だった。
山本さんが事前にレイアウトした画用紙に、水彩絵の具を使って着色していく過程を、背後からカメラマンが撮影して大型モニターに映し出した。題材として選んだのは壱岐の海、空、砂浜で、水を含ませた刷毛(はけ)で、何色も混ぜた絵の具をまんべんなく塗り、空、雲、海の順番でグラデーション。「二三雲」の愛称で呼ばれる沸き立つような積乱雲まで約20分で完成させ、その流れるような作業に観客は見入っていた。山本さんは「完成させた絵をぜひ撮影して、フェイスブックや待ち受けにしてください。額縁に入れておきます」と写真撮影を許可。完成した原画は今後、同館で展示を予定している。
質問コーナーでは「上手くいかなかった時、描きたくない時はどのように切り替えているのか」「どうしたら描写力、デッサン力が身につくのか」が寄せられ、山本さんは「アトリエで一人、300枚描くことがあり、仕事のしすぎで描けなくなり、スランプだと感じたことがあった。まずは乱作せずに描き続けることが大事。中学生の時、美術の先生の描く水彩画を真似して、雲なら雲だけと同じものを何度も描いた。自分の好きなものを描き続ければ、スランプ脱出にも、デッサン力の向上にもなる」と自身の経験を話した。