JA壱岐市の定期2月子牛市場が1、2日の2日間、芦辺町の壱岐家畜市場で開かれ、平均価格は79万2524円(牝69万7142円、去勢86万5006円)で、前回の平成30年12月市場と比較して93・4%、約5万6千円の大幅下落となった。取引頭数は799頭(牝345頭、去勢454頭)で前回から101頭の増加で、販売総額は約6億3323万円と前回より約4千万円の増加だったが、平均価格が80万円を割り込んだのは平成29年10月市場以来で、生産者の表情は暗かった。
壱岐家畜市場では、平成29年4月市場で平均価格が90万4032円にまで高騰。去勢は平均100万円を突破し、取引価格を告げる市場のアナウンスが「100万円」を超えることも当たり前の光景になっていた。だがそれからわずか2年弱、今回の2月市場で税別100万円を超えたのはごくわずか。高値のアナウンスに会場がどよめくこともなかった。JA壱岐市・川﨑裕司組合長は「壱岐の昨年12月市場は平成30年の最高を記録するほど、高価格になっていた。5万6千円の価格下落は確かに小さな幅ではないが、前回が高過ぎたのだから、それほどショックを受けることではないと思う。生産者と肥育業者のバランスを考えれば、これくらいの価格で安定してくれるのがいいのではないか」と冷静さを見せた。
一方で「全国的に子牛価格は以前よりも下がっているのは、購買者の頭の中にTPP(環太平洋戦略的経済連携協定)、EPA(欧州連合との経済連携協定)があるのかもしれない」と昨年末に発効した11か国とのTPP11、2月1日に発効したEPAの影響を危惧した。牛肉などの重要5分野の輸入関税は撤廃適用外となっているが、38・5%の関税率は段階的に引き下げられ、16年後には9%まで下がる。TPPから離脱した米国との2国間交渉でも同水準程度に着地する可能性が高い。和牛は品質、価格面で輸入牛肉とは直接の競合関係にないとされているが、低価格の輸入牛肉が出回れば影響は避けられず、政府はTPP11による和牛・交雑種の生産減少額を「年間122~246億円」と試算している。
また財務省が1月25日に発表したTPP参加国からの1月上・中旬の牛肉輸入量は、関税が27・5%に下がったカナダ産やニュージーランド産の輸入が増え、上旬1万7㌧、中旬1万4200㌧で、すでに昨年1月の対象国からの1か月分輸入量(2万1152㌧)を14%も上回っている。4月1日には発効2年目を迎え、関税は26・6%に下がる。EPAも和牛には直接関係がないとはいえ、乳製品やイベリコなど高級豚肉の価格下落は、和牛価格にも影響を与える可能性がある。今後も子牛市の取引価格は予断を許さない状況が続きそうだ。